東京都市大学環境学部枝廣淳子研究室は就職活動生向けのガイドブックを作成した。同ガイドブックでは、CSR(企業の社会的責任)情報をもとにして就活生への情報開示度で、企業をランク付けした。就活生が求めている情報は、リクルートサイトよりも、CSRレポートに掲載していることが分かった。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
同ガイドブックの名称は、「地球と自分を幸せにする企業」の情報の見つけ方ガイドブック。枝廣研究室の公式サイトで無料で公開している。就職ランキング上位の会社で、CSRレポートを発行している41社を対象に、就活生に対する情報開示に関してランク付けした。
■迷ったら、リクルートサイトよりもCSRレポート
ランクを付けるにあたって、事前に就職活動生200人に「就職活動のときに知りたい情報」を聞いた。集めた情報を、企業軸(事業の安定性・社会貢献活動など)と自分軸(社員の意見を聞いてくれるのか・育休後の復帰のしやすさなど)の2つに分け、「マズローの欲求5+1」(生存・安全・所属・承認・実現・利他)の項目別に得点を付けた。
その結果、上位にはサントリー(119点/120点)、味の素(102点/120点)、損保ジャパン日本興亜ホールディングス(100.5点/120点)、三井住友海上火災保険(100.5点/120点)が選ばれた。
ガイドブックを作成したことで、就活生が求めている情報は、リクルートサイトよりもCSRレポートに記載されていることが分かった。
枝廣研究室のゼミ長である北貴一さん(東京都市大学環境学部3年)は、「リクルートサイトには、収入や制度などは載っているが、肝心の中身が分からない」と指摘する。CSRレポートには、育児休暇の取得者数や有給の消化率が掲載されているので、企業の実態が分かりやすいと言う。
■CSRと若者の親和性
現代の若者の仕事観は経済面よりも、「やりがい」や「貢献度」を重要視しているといわれている。そうした状況において、CSRレポートの情報は、「若者の価値観と合う」と横山聖弥さん(東京都市大学環境学部3年)は断言する。
横山さんは、このガイドブックを作成するプロジェクトの副リーダーを務めた。学生には、企業理解につながるため、企業軸と自分軸の視点で「CSRレポートを読むべき」とし、企業には、「企業軸よりも、自分軸を強化すると学生から共感されやすい」と伝える。「人材の育成制度や有休の消化率など、自分軸に関する情報が多ければ、社員として入社したときのイメージがつきやすい」。
枝廣淳子教授も「例えば、人材育成の情報を掲載するときに、企業が求める人材への育成情報だけでなく、社員一人ひとりの持ち味を発揮できるような情報も掲載すれば学生に共感してもらえる」と言う。
枝廣研究室は2月17日、「企業×就活生どちらも幸せになる理想の企業選び」セミナーを開いた。同セミナーには、大学生と社会人合わせて100人ほどが参加した。就活生が企業に求める情報開示の内容について話し合った。
セミナーに参加した味の素CSR部(サステナビリティレポート編集担当)の大和田梨奈さんは、「最近の就活生を見ていると、働くことを通して、自分だけでなく、他者をどれだけ幸せにできるのかを求めていると感じる」と話した。
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