B2B企業のCSR活動をブランディングにつなげるカンファレンスが2月24日、虎ノ門ヒルズで開かれた。B2B企業でCSR活動を推進している担当者が登壇し、サステナビリティはブランドを強くするのか議論した。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

B2B企業のCSRブランディングについて話した。右から、UBS証券の堀氏、中越パルプ工業の西村氏、日立製作所の増田氏、オルタナ編集長の森氏

B2B企業のCSRブランディングについて話した。右から、UBS証券の堀氏、中越パルプ工業の西村氏、日立製作所の増田氏、オルタナ編集長の森氏

カンファレンスの名称は、サステナブル・ブランド国際会議2016 東京シンポジウム(主催 博展/米サステナブル・ライフ・メディア社)。午前の部では、「B2B企業のCSRブランディング」というテーマでパネルディスカッションが行われた。登壇したのは、日立製作所情報・通信システム社コーポレートコミュニケーション本部ブランド戦略部担当部長兼CSR部担当部長増田典生氏、UBS証券コミュニティアフェアーズ&ダイバーシティエグゼクティブディレクター堀久美子氏、中越パルプ工業営業企画部長西村修氏の3人。モデレーターは同会議のプロデューサーでオルタナ編集長の森摂が務めた。

パネルディスカッションで話し合ったのは、「サステナビリティはブランドを強くするのか」。日立製作所の増田氏は、「強くする」と力を込めた。同社はB2B2C2S(Sは社会)と掲げ、価値の最終提供先を消費者の先にいる社会としている。事業を考える際、社会的課題を起点とするバックキャスティングの形を取る。

岩手県釜石市にある人口2000人以下の漁村でNPOと連携して復興支援活動に取り組んできた。増田氏は、「活動の先に、ブランディングは醸成されていく。ブランドが強くなるとサステナブルな活動がしやすくなる」と言う。釜石市の地元住民からは、「ここの人口は1800人ほど。33万人の従業員を抱える日立製作所のような大企業がここに来てくれることは、ぼくらの誇り」と感謝を伝えられた。

同社ではITを使った学校教育支援にも取り組んでいる。これらの活動はプロボノとして行ってきたが、最近では有償で引き受けるケースも増えてきたと、サステナビリティの副次的な効果を語った。

UBS証券の堀氏は、「サステナビリティを追及することが企業の存在価値になっている」と話した。ビジネスのあらゆる側面にサステナビリティが求められ、グローバルではその動きが主流になってきていると説明した。

堀氏は社内を革新するため、社員にボランティアの参加を呼びかけた。同社のCSR活動のテーマは、「長期的かつ社員が地域に入りこむこと」。聴覚障がい児向けにプログラミングを教えるボランティアなど75のプログラムがある。65%の社員がボランティアに参加している。

聴覚障がい児向けのプログラミング教室では、社員がまず子どもから手話を教わった。「一方的に教えるだけではなく、お互いがパートナーとなって交流し、地域の子どもを元気にした」(堀氏)

森氏はCSRのブランディングについて、「インナー向けが大切」とし、PRの意味ではなく、社員の意識変革を通して、ブランドになっていくと話した。

■CSR部なくても動け

中越パルプ工業は年間100万トンの紙を生産する製紙会社。特徴的なのは、日本唯一国産竹から紙をつくっている点だ。工場を置く地域のタケノコ農家から、竹林整備で出た大量の竹を「なんとかしてくれないか」と頼まれたことがきっかけでこの取り組みを始めた。1998年から生産を始め、今では年間2万トンの竹を紙に活用している。

西村氏は「当社には、CSR部も広報部もない。私自身が意義を感じて発信しているが、サステナビリティが企業のブランディングにつながるのか、まだ正直分からない」と話した。

しかし、CSRへの意識が高くない企業のほうがやれることはたくさんあると話す。「できてない組織だから活躍できる。やるべき人がやっていないのだから。巻き込むことが下手だから苦戦しているが、外に発信し続けていけばそのうち会社全体も変わっていくと思っている」(西村氏)。

中越パルプ工業は竹紙の取り組みで、「生物多様性アクション大賞2015」に入賞、竹紙でつくったカレンダーは「第67回全国カレンダー展」で銀賞と審査員特別賞を獲得するなど多くの賞を受けている。

[showwhatsnew]