学生団体LGBT Youth Japanは今年3月、ニューヨークへのスタディツアーを行った。ツアーでは、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなど性的マイノリティーの総称)支援を行う先進企業や団体を訪れた。今回は、精神疾患を抱えたLGBTへの支援を行うRainbow Heights Clubを訪ねた。

Rainbow Heights Clubでは精神疾患を抱えたLGBT一人ひとりが希望を持って生きていけるような、安心で快適な空間とサポートを提供することを目指している。国内で唯一の政府から助成金を受けている精神疾患を患ったLGBTの支援団体だ。利用者は全てのプログラムが無料で利用できる。

Rainbow Heights Club

Rainbow Heights Club

現在では500名以上のメンバーが在籍し、週5日オープンしている。利用者には2ドルの補助がある(交通費等)。毎日夕食を1ドル(任意の寄付)で提供し、心理学者、セラピストがいない環境で、スタッフや他の参加者と交流する場を作っている。病院などでは「理解されないのではないか」という不安からカミングアウトできないLGBTに対して、クリニックではなく、「場」の提供に重点を置いている。

訪問当日は、現在Rainbow Heights Clubに勤務をしている日本人のムサさんから話を伺った。施設の中を案内してもらい驚いたことは、利用者のためのアクティビティの種類と数の豊富さ。利用者の交流をはじめ、映画鑑賞会、料理教室、一対一のコンピューター教室、キャリアカウンセリング、ビリヤード、遠足、ビンゴやカラオケ大会など精神疾患と聞くと暗いイメージをもってしまいがちだが、それを吹き飛ばすような明るい雰囲気が印象的だった。

団体の方針の一つにPeer Modelというものがある。これは仲間が精神疾患を克服していく姿を見せ合い、お互いを認め合うことによって、メンバー同士で勇気をだして進んでいこうというもの。2ドルの交通費補助や、パソコンが無料で利用できるなど、低所得者やホームレスへのサポートも充実していた。

施設見学の後には、スタッフと利用者で定期的に行うコミュニティーミーティングというものに参加した。最初にミーティングのルールなどを参加者に口頭で読み上げてもらい、相手を不快にする発言はしないなどの共通理解を認識した。その後に参加者各自が生活において目標としていることがどんなに小さなことでもいいから達成できているか?(前のミーティングからずっと禁煙している!etc..)、できていたらみんなで拍手して褒め称えるなどの自己肯定感を利用者同士で高める工夫がなされていた。その後には、過去に犯罪歴がある人でも投票ができるという社会記事を利用者全員でシェアしていた。

全体を通して感じたことは、スタッフが一方的なケアをしている施設ではないということ。例えば最初に述べたPeer Modelの存在や、コミュニティーミーティングの中で利用者が社会で必要な情報を共有していくなど、利用者への自立を促している団体という印象を受けた。

あくまで病院ではないため、ここに来ることは強制でもなんでもありません。しかし、利用者のほとんどがスタッフ、メンバーが大好きであり、家族のような雰囲気の中で自分らしくあることで輝きを放っていた。実際、このRainbow Heights Clubを利用した90%の利用者が病院での精神疾患治療をする必要はないという結果がでているように、この施設の雰囲気、そしてスタッフの豊富な知識とプロフェショナルな対応は、群を抜くものだと感じた。

【「LGBTスタディーツアー in New York 2016 報告会」】
とき:2016年5月5日(木)13:30 – 16:00(開場13:00)
ところ:エムワイ貸会議室 高田馬場 東京都新宿区高田馬場1-29-9 TDビル3F(受付4F)Room C
参加費:500円(会場費・資料代)
言語:日本語
定員:80人
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