熊本地震から1カ月が過ぎたが、東日本大震災の教訓を生かした支援活動が現地では行われている。現地の状況を読み、その時のニーズに沿った支援を行った取り組みを紹介する。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

物資支援を行う、太刀川和男・伊藤忠商事九州支社長(右)

物資支援を行う、太刀川和男・伊藤忠商事九州支社長(右)

■現地NGOに資金提供

伊藤忠商事は4月18日、特定非営利活動法人ジャパン・プラットホーム(東京・千代田)に1000万円を寄付した。熊本地震が起きてから4日後のことだ。多くの企業や団体が寄付をしたが、同社では緊急フェーズに合った寄付の仕方を選んだ。

ジャパン・プラットホームに寄付することで、被災地で活動している複数の加盟NGOの活動資金となった。一刻を争う緊急フェーズでは、現地で小回りの利くNGO/NPOへの活動支援が求められている。
同社では国内外の社員から被災者への義援金を集める為、18日中に社内向け専用募金口座を開設した。会社からの寄付金も同額マッチングして総額513万1508円を集めた。これは、震災発生1ヶ月後に、被災された方々に義捐金として直接分配される中央共同募金会へ寄付することにした。

寄付をする企業側も、その寄付金がどのように活用されるのか、時期と使用用途を考えて寄付先を選定するという行動をとるようになってきている。

同社は物資の支援に関しても、総合商社としての強みを生かした。九州支社の取引先から、熊本市で不足している物品リストをもらった。リストには、簡易トイレや下着・インナー類、枕などが掲載されており、全国各地の担当者に1000個単位で在庫状況を調べるよう指示した。東日本大震災のボランティア経験のある社員も350人を超えており、日頃の社会貢献への意識の醸成が役に立ち、「社内にも協力体制ができていて、2~3日で集まった」(同社猪俣恵美 広報部CSR・地球環境室)。

災害時の人手不足を考慮して、現地で物品の仕分けをしなくても良いように、市が運営する区の避難所の数だけ箱をつくり、物品のサイズなどを均等に分けて発送元で積め直しを行った。こうして、ゴールデンウィーク中には、迅速に物資を被災された方々の手元に届けることができた。

■AIU、災害被害の立会調査に女性の視点

女性目線のきめ細やかな対応が好評

女性目線のきめ細やかな対応が好評

AIGグループのAIU損害保険では、熊本地震で被害を受けた自宅への立会調査に女性の視点を生かしている。これまで、災害時の立会調査を担当していたのは主に男性社員だったが、一部地域では女性社員が訪問している。

女性社員はスリッパを持参し、バックを床に直接置かず、タオルの上に置くなど、被災者を配慮しながら訪問している。被害について打ち明けやすい環境づくりなど女性の視点を活かした、きめ細やかな対応が好評だ。

同社での女性社員は、内務事務を担当し、立会調査は主に男性社員が担当していた。熊本地震における保険金支払いの対策室に配置された女性社員から、女性が抱える不安を解消するために、女性の視点を活かした立会調査のアイデアが必要と感じ、女性従業員ネットワークに呼びかけ、社内で提案した。

同ネットワークの名称は、「Women & Allies ERG (Employee Resource Group) Japan」。女性社員向けにリーダーシップやキャリアをテーマにした企画を行う。女性社員だけでなく男性社員のAlly(支援者)としての参画も推奨しており、多様性を推進している。登録者数は641人(女性456人、男性 185人)。

■宿不足を解消

東日本大震災で活躍した「石巻専修大学ボランティアキャンプサイト」を参考にして、熊本の若者たちが5月初旬、崇城大学(熊本市)に「ボランティアビレッジ」を開いた。テント泊や車中泊ができるスペースが約85組分あり、熊本駅から二駅と交通の便も良い。

宿不足を解消する「ボランティアビレッジ」

宿不足を解消する「ボランティアビレッジ」

震災発生後、多くの支援関係者やマスコミが熊本に来たため、中心街のホテルや旅館はほとんど空きがなく、宿を取ることに苦戦したボランティアは少なくない。

ボランティアの力は今後ますます必要となってくる。応急危険度判定が進み、罹災証明書の発行も本格化することで、家屋の片付けや解体した家屋のがれき撤去といった作業が発生し、被災者からの要望増加が想定されている。

ボランティアビレッジには、連日30〜40組のボランティアたちが訪れている。テントの貸し出し(1日500円)は1泊500円で、レンタルバイクやレンタル自転車もある。

掲示板には最新のボランティア募集情報を載せ、ボランティア交流スペースで情報交換もできる。

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