東京都府中市で「多言語多文化共生」の役割を果たすコミュニティFM局「ラジオフチューズ」がある。開局から1年弱、市民ボランティアによってオリジナリティ溢れる番組が放送され、着実に地域の理解を得て活動している。(武蔵大学松本ゼミ支局=反田 実穂・武蔵大学社会学部2年)
「市民メディア」「多言語多文化共生」の役割を果たすために開局した東京都府中市のコミュニティFM局がある。
代表の大山一行さんは過去にNPO法人を母体に「京都三条ラジオカフェ」や鹿児島の「大隅半島コミュニティFMネットワーク」を立ち上げた人物だ。
大山さんがコミュニティFMを立ち上げたきっかけは、知り合いだった東京外国語大学の元学長に依頼されたから。人口約20万人、外国人約5000人が居住する府中市に市民メディアと多言語多文化共生の役割を担うために「ラジオフチューズ」を開局した。一般社団法人として立ち上げ、大山さんに加えて4人の社員と、多くのボランティアによって運営されている。
現在、約50タイトルの番組を抱えており、学生や主婦、ラジオファンなど誰でも気軽に番組を持ち自由に情報発信ができる場になっている。近郊に位置する東京農工大学や東京外国語大学の学生もボランティアで参加し、オリジナリティ溢れる番組制作、放送を行なっている。
放送の中でも特に力を入れているのが性教育だ。学生や地域の助産院の番組で、性やLGBTに関しての話題を取り上げることが多いそうだ。これはコミュニティFMという敷居が低いメディアだからこそできることであると大山さんは話している。性に関してコンプレックスを持っている人々や子どもを持つ親たちに向けてメッセージを発信する場として重要な役割を果たしていると感じた。
開局に際して設備面や費用面で様々な苦労があったというが、気軽な番組放送やラジオ制作ワークショップ、イベントでの活動によって市民から着実に市民メディアとしての理解を得ている。「こども放送部」という周辺中学に通う中学生が番組の放送に関わる取り組みは市民参加の最たる例と言える。
最近では災害時の対応として訓練放送の実施や警察・消防と連携し地域の防犯、防災に関連する情報発信も行なっている。緊急事態が発生した際、大山さんら社員は正確な情報を求めラジオ局を出てしまうため、パーソナリティとPAを一人でこなすワンマン放送ができる人材を育成することが課題であると話す。人手不足は深刻でボランティアの力が必要とされている。
今後は、スタジオの災害対策や、まだ府中市全域とは言えない放送エリア拡大のための設備を整え、更なるコミュニティFMの理解や多言語多文化共生を目指していく。
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