LGBTなどのセクシュアル・マイノリティ(性的少数者)が、より自分らしく生きていくことができる社会の実現を目指す「東京レインボープライド2016」が5月8日に閉幕した。今回のパレード・フェスタの動員数(2日間)は70,500人、フロート(梯団)数が18、ブース出展は約120と、いずれも過去最高となった(主催者発表)。協賛企業のAIGグループの取り組みについて取材した。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
AIGジャパンホールディングス 只友真理・CSRマネージャーは、AIGグループのLGBTに関する取り組みのきっかけは、「九州の保険代理店からの提案です」と言う。「世界各国で保険事業を展開する企業グループとして、日本におけるLGBTへの理解促進をお手伝いする必要性と期待を感じ、昨年11月の『九州レインボープライド』の協賛と、今回の『東京レインボープライド』への協賛を会社として決定しました」。
AIGジャパンのブースではオリジナルステッカーや手作りのレインボーフラワーを無料で配布し、写真撮影のサービスを行った。2日間で1,000人以上が訪れた。同社の役職員や家族約60人も参加し、沿道で見守る人々へ、同社の取り組みをアピールした。
ブースやパレードの運営を行ったのは、今年2月に発足した、LGBTの当事者と支援者からなる会社公認の従業員グループ「LGBT & Allies Rainbow ERG (Employee Resource Group) 」。
4月22日に社内で行われたキックオフイベントには、全国の拠点からテレビ会議などで約160人の役職員が参加した。
従業員グループの代表を務めているのは、AIGテクノロジーズ株式会社の中島愛さん。中島さんはLGBT当事者だ。同性のパートナーがいることを、職場では仲の良い数人の同僚にしか打ち明けられなかった。「自身のことを話せないので、どこか壁があるような閉塞感を職場で常に感じていました」と告白。
今回、社内イントラに掲載された記事で、AIGグループが「九州レインボープライド」に協賛したことを知り、LGBTの職場環境を改善するために自分も何かできないかと考え、勇気を出して従業員グループの立ち上げに手を挙げた。
中島さんは、「AIGがダイバーシティ&インクルージョンを推進する中、LGBTも含め多様な社員が働きやすい職場環境を作り、多様な視点に基づいて顧客に対する理解を深めるために、様々なイベントや勉強会を企画し、社員交流の場を広めていきたいと考えています」と意気込む。
■「佐藤さん」よりも多いLGBT
電通ダイバーシティ・ラボが2015年に行った調査ではLGBTの割合は人口の7.6%とされている。この割合は、日本で馴染みがある「佐藤」「鈴木」という苗字よりも多い。
ヒトには3つの性がある。それは、身体の性・心の性・恋愛対象の性である。例えば、ゲイの場合は、身体の性は男性、心の性も男性、恋愛対象の性も男性。バイセクシュアルは、身体の性と心の性が一致して、恋愛対象の性は男女問わない者のことで、トランスジェンダーは身体の性と心の性が一致していない者を指す。これらの性以外にも、いかなる他者も恋愛対象にならないアセクシャル、自分自身の性を決められない・分からないクエスチョニングもある。
世の中は、男女二元論が常識とされているが、ヒトには無数の性がある。米国のフェイスブックでは性の選択肢は50個あるほどだ。
LGBTへの対応は、企業が求められる喫緊の社会的課題の一つだ。グローバルでは、ロシアが2013年6月に反同性愛法を成立させたが、この法律に対して、欧米首脳が反対の意を込めてソチ冬季五輪の出席を見送った。日本では2013年、東京ディズニーリゾートで初の同性カップルによる結婚式が行われたが、当初はオリエンタルランドに断られた。同社の判断に対して、SNSで批判が殺到し、挙式にいたった経緯がある。
LGBTに対する差別行為は、批判を浴びるが、LGBTフレンドリーになれば、共感を受け、企業価値の向上にもつながる。
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