インターネット上で、NPOの社会貢献活動や個人の創作活動などの資金集めをするクラウドファンディング(以下CF)が日本に上陸して3年。ここに来て、企業が資金援助をしたり自治体と連携してプロジェクトを広報するなど、新しい動きが出てきた。今年3月には国内CFの市場規模は3億円を突破し、今後も進化と拡大が続きそうだ。(オルタナS副編集長=池田真隆)

プロジェクトのゴールまで、企業も伴走する「マッチングギフトサービス」

2011年3月に設立した日本初のクラウドファンディング「REDAYFOR?(レディフォー)」は6月、企業と個人がタッグしてプロジェクト資金を集める取り組みを始めた。「マッチングギフトサービス」という名称で、企業は選んだプロジェクトの目標金額の半額を支援する。

アサヒグループホールディングスがCSR活動としてこの取り組みに参加し、これまでに2つのプロジェクトに資金を出している。レディーフォーの米良はるかプロダクトマネージャーは、「企業側には、消費者の声に応える取り組みができていない悩みがあった。(マッチングギフトサービスで)社会的な取り組みを多くの消費者とともに応援してほしい」と話す。

■島根県、CFで地域活性化

県と連動したCFを仕掛けたのは、サーチフィールド(東京・渋谷)だ。同社では、2012年6月から地域活性化に特化したCF「FAAVO(ファーボ)」を日本各地に展開してきた。宮崎、新潟、石川など11の府県に広がっている。

個人のプロジェクトを、県が応援する仕組みとなる

今年9月、島根県に地方自治体認定事業者として認められ、県と連携したCFが生まれた。寄付者に配当金の形ではなく、プロジェクトの成果物を報酬とする購入型CFが行政と連携するのは、日本初だ。

今後は島根県がプロジェクト掲載希望者を募り、認められた企画が随時掲載されていく。今年中に、10件のプロジェクトを成功させ、総額400万円ほどの資金調達を目標とする。

島根県地域振興部しまね暮らし推進課の田中徹さんは、「県内活性化のためにさまざまな企画の話があったが、資金面で断念せざるを得ないケースがあった。ネットなので、地理的な距離は関係なく個人から資金を募る仕組みで解決したい」と話す。

■大型資金を調達する世界初の取り組み

今年6月に誕生した「ShootingStar(シューティングスター)」は、世界初の取り組みとなるブロックファンディングで1千万円超規模の資金を集める。ブロックファンディングとは、募集総額を複数回に分割し大型資金を調達する手法だ。

この資金調達手法は、築90年で2001年に閉校した旧・雄勝町立桑浜小学校を改修し、複合施設としての開設を目指すプロジェクトに使われている。施設は全国の子どもを対象に、環境社会学校として機能する。

ミスターチルドレンをプロデュースした小林武史さんや直木賞作家の林真理子さんも協力し、募集は月に1回で、計12回行い総額2500万円を集める。9月20日から30日にかけて行われた第一弾の募集では、資金提供者への特典として林真理子さんとのランチ権などがあり、わずか10日で目標金額150万円が集まった。

サービスリリース記念の記者会見には、シューティングスターを運営するJGマーケティングの佐藤大吾代表(右から2番目)、堀潤氏(右端)や高橋歩氏(左から2番目)らも駆けつけた

■「クラウドファンディング」9割知らない

世界のCF市場は、2012年度に昨年度比81%増の27億ドルを記録するなど、盛り上りを見せる。国内でも、1千万円を超す規模のプロジェクトが成立していることもあり勢いを感じるが、CFの知名度はまだ低い。

リビジェンが今月22日に発表した「クラウドファンディング」に関する認知度・実態調査では、「クラウドファンディング」という言葉の認知度は1割強となった。全国の10~30代のスマートフォンユーザー500人のうち約9割は知らない結果となった。

しかし、知名度は低いがCFには希望が見える。それは、モノの売れない時代に最も大切とされる「ストーリー」を持っていることだ。クリエイターに特化したCF「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」を立ち上げた家入一真さんは、「CFでは、モノを買うのではなく、そのモノの背景にあるストーリーに共感してお金を出す。モノが溢れ成熟した時代に、相性が良い」と分析する。