トヨタ財団は6月16日、NPO幹部向けにトヨタの「問題解決手法」を伝える講座を開いた。同講座は今年12月までに6回実施するもので、同日で折り返しとなる3回目を迎えた。回を重ねるたびに、議論は活発化し、NPOが抱える真の課題が明らかになりつつある。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
同講座の名称は、トヨタNPOカレッジ「カイケツ」。公募で選ばれた30のNPO幹部が受講している。受講生は6人1グループに分かれ、それぞれのグループに1人講師が付く。講師は、トヨタ自動車で品質管理に携わる現役・OBら。
第3回目は、「テーマの選定と現状把握」を行った。テーマとは、一言で言うと「改善点を絞ること」。講師の杉浦和夫・改善QA研究所/元トヨタ自動車は、「テーマを読めば、改善の狙いが理解できるように表現するべき」と説明。
原則として、どこで(製品名、工程名、作業名)・何を(管理特性)・どのように(水準、方向)の3項目を具体的にしなければいけない。例はこうだ。「スポットガン溶接作業における姿勢の軽減」「錆び止め工程におけるフロアーへのオイル滴下の防止」など。
このテーマの選定ができたら、次は「現状把握」に進む。
現状把握は、問題が起きている事実を定量的に把握するステップだ。客観的なデータを集め、その問題が起きる原因をさまざまな角度から調べていく。そして、その膨大な情報量から、問題点を絞っていく。
この現状把握の次のステップとして、「要因解析」があるが、現状把握と混ぜて考えてしまいがちなので、注意が必要だ。
杉浦氏は、現状把握と要因解析の区別について、下記の通り説明。
現状把握は、「不具合現象のみをいろいろな角度から調べるステップ」。一方、要因解析は、「仕事のやり方の悪さと不具合現象の関係を調べるステップ」。
受講生たちは、この講座に合わせて、用紙1枚に、テーマの選定と現状把握をまとめることを課題として与えられていた。同日、それぞれのグループで、各NPO幹部が発表し、講師やほかの受講生たちが質問を投げかけた。
■「層別」で細分化
茨城県つくば市で、障がい者を雇用し、農場を運営している認定NPO法人つくばアグリチャレンジの伊藤文弥代表は、「社員の働くレベルの向上」をテーマに選んだ。伊藤さんは、「9割5分仕事ができていても、遅刻や用具の片づけができていないだけで、その人の評価が下がってしまう。この小さいミスをなくしたい」と話す。
伊藤さんは「社員の遅刻・欠席」「椅子やスリッパの片づけ」「書類の提出締め切りを守れているか」などの項目を、2週間の間調べた。その資料をもとに、グループで報告した。
それぞれの項目ごとに、数字を出したが、どのようにすれば、これらのミスを減らせるのか、伊藤さんはアドバイスを求めた。講師の中野昭男・のぞみ経営研究所/元トヨタ自動車は、「項目ごとにさらに情報を細分化していくべき」と伝えた。「層別」という言葉を使い、「曜日別、通勤場所別、子どものありなしなどで分けていけば、課題が定量的に明らかになっていく」。
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