今日、テレビやインターネットの普及によりラジオを視聴する人が減少している中、北海道ではコミュニティFM局の数が増えている。北海道には現在27のコミュニティFM局があり、人口に対するラジオ局の数は全国でもトップレベルだ。「FMびゅー」、「wi-radio」などを開局した沼田勇也さんは、「災害時に役に立たなければ意味がない」とコミュニティFMの役割を明確に言い切る。(武蔵大学松本ゼミ支局=須郷 佳菜・武蔵大学メディア社会学科3年)
FMびゅーは2008年に開局した。2001年に発足された「ぼこいふじエンターテイメント」というコミュニティFM放送局開局準備ボランティア団体を吸収する形で誕生した。室蘭市、登別市、伊達市の地域で放送されている。
現在9人のスタッフに加え、市民のボランティアスタッフで放送を行っている。FMびゅーで制作した番組のほかに、数多くのボランティアが作った番組も放送している。
沼田氏は放送への市民参加について、「ラジオ局は受け渡しの場であるため、市民が発信者であるべきであり、伝えたいこと・やりたいことがあれば、どんどん参加してほしい」と語る。
「街の様子を音で伝える」という理念のもと、毎日の暮らし・頑張っている人の応援・趣味や文化活動・環境への取り組みを伝えている。情報が十分に伝わらないことで、つまらない街と思い、街を去ってしまう人も多い。住んでいるうちに良さを知ってもらえるような放送を心掛けている。
新聞から知るのではなく、リアルタイムの情報として人々を動かしたいと考えている。インターネットの場合、自分に興味のある事を検索し情報を得るため、それ以外の情報に触れる機会が少ない。ラジオは聞いてさえいれば様々な情報が入ってくる。そこがラジオの強みであるという。そこから、市民同士のつながりができ、新たな動きにつながっていく。そんな放送を目指している。
ラジオは災害時に大きな役割を果たす。これまでも、暴風雨や大規模停電の際の放送で、市長から分からないことはとりあえずFMびゅーを聞いてくれと言われるほど、市民に必要な情報を的確に伝えてきた。
「災害時に役に立たなければ意味がないというくらいの覚悟でやっている」とコミュニティFMの役割を主張する。数年のうちに有珠山の噴火が予想されており、それに備えた訓練や放送内容などの検討を進めている。いつ何が起きるかわからないのが災害であり、どんな場合でも放送が出来るよう、発電機をかける訓練なども行っている。
今回の取材で、コミュニティFMの役割や災害時に期待されることなどが見えてきた。今後も多くの市民が関わり、一緒に作り上げていくラジオ局であり、地域に根差した放送を届けてくれるだろう。
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