那覇市で地域の住民をつなげているコミュニティFMがある。ほぼボランティアで運営しており、米軍基地から返還され、新しく開発された那覇の街に「懐メロ」を届けている。「プロではなく普通の視点が大事」と掲げ、地域住民に愛されている放送局だ。(武蔵大学松本ゼミ支局=細川 楓・武蔵大学社会学部メディア社会学科3年)
那覇を訪れると、新しい建物、美しい美術館、大型のショッピングセンターなどが立ち並び、私が住む関東の郊外よりも栄えていると感じる。ここ、那覇市おもろまち一帯は、元々米軍基地であった。返還されたのちに開発され、新しい街ができたのだ。この地域のコミュニティ形成に大きく携わってきたのが「FMレキオ」だ。
FMレキオは那覇市内で2番目に古い歴史を持つコミュニティFMだ。トークを中心とする他のコミュニティFMとは異なり、音楽を中心にしていることが特徴だ。そして、新曲を多く流す県域局とも異なり、音楽はいわゆる「懐メロ」ばかりだ。
「懐メロには思い出が詰まっているんですね。その曲に関するストーリーを話していただくことで、共感を呼んだり、同調してもらうのを踏まえて音楽を入れるんです」
これが懐メロを流す理由だ。昭和の時代、世代の異なる人たちもみんな同じ曲を聴いていた。だからこそ、1曲に対しての思い入れが非常に深い。同じ時代を過ごした人々がそれぞれの思いに馳せられるのが懐メロであり、FMレキオである。
パーソナリティや技術など、ほとんどのことをボランティアスタッフが担っている。そして、それを応援したい人が自然と集まり今のFMレキオがある。FMレキオではこのサポートを「ちっちゃいものクラブ」と呼んでいる。
「プロではなく普通の視点が大事」、これは「何か決められたことを伝えるのではなく、自ら体験したことを『ウチナーグチ』(沖縄言葉)でそのまま放送していくことにコミュニティFMの良さがある。この地域の考え方のアイデンティティをそのまま出していける」と言う。
「わたしたちの街に住んでいる普通の人にマイクを向けたというところがFMレキオの始まりであり、これからもそうしていきたい。そしてそれがFMレキオ」と語ってくれた。
ごくごく普通の主婦やサラリーマンがそれぞれの目線で感じたことを伝える。どんな人でも、どんなことでも、いつでも発信できる放送を目指している。
「ちっちゃいものクラブ」だからこそできる放送。大きなものにまかれず、いつまでもうちなーんちゅに愛されるコミュニティFMであってほしい。