生活協同組合コープこうべは9月22日、神戸市で高齢化に対応した地域福祉について考えるシンポジウムを開いた。福祉、NPO、行政関係者が集まり、異業種間でアイデアを出し合った。出てきたアイデアは、コープこうべが11月に開設するサービス付き高齢者向け住宅での事業化を目指す。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

シンポジウムには全国から100人が集まった

シンポジウムには全国から100人が集まった

「うちは箱を用意するだけ。何をするのかはみんなで決めてほしい」――。コープこうべで福祉事業を担当する本木時久・執行役員は、このシンポジウムを企画した狙いをそう話す。本木氏が箱と言うのは、11月に神戸市東灘区に開設する「コープは~とランドハイム本山」のことだ。

コープこうべとして、第一号となるサービス付き高齢者向け住宅。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の部屋数は平均すると30室ほどが相場だが、その倍となる62室を用意した。地域住民の交流スペースやあずかり保育、認知症対応型デイサービス、機能訓練特化型デイサービス、クリニックなどもある。

シンポジウムでは、このサ高住を拠点として、地域課題を考えるアイデアを出し合った。そもそもこうしたシンポジウムを企画した背景には、コープこうべが生協としてのあり方を変えたことがある。コープこうべは、日本最古の地域生協で、今年で96年目を迎える。これからの100年を考えていくにあたって、これまでの「良心的な小売業」では、生き残れないと経営陣は決断した。

これからの生協のあり方として掲げたのは、「社会的課題の解決」。拠点を置く神戸が抱える課題の一つに、高齢化がある。神戸市の人口は約150万人で、高齢化率は26%。復興住宅などのニュータウンが各地に建てられており、地域によっては一気に高齢化が進んでいる。高齢化率6割を超える地域もある。

なかでも、独居老人は多く、市としては、団塊の世代が75歳を迎える2025年問題を危惧している。現在、同市の65歳以上の5人に1人が介護認定を受けているが、75歳になると、この数が急激に増えると予測されている。認定率が上がることで、社会保障費が膨らむ。その問題への対応として、「健康寿命を伸ばし、元気な高齢者を増やしていきたい」(太田亜紀・神戸市保健福祉局高齢福祉部介護保険課介護予防担当係長)と話す。

コープこうべとしても、この拠点を利用して、高齢化などの地域課題を解決していきたいと考えた。このシンポジウムで出たアイデアから事業化までを目指す。狙いは、地域住民を巻き込みながら、サ高住を運営していくだけではない。こうしたイベントに住民が参加することで、介護・福祉とつながる機会を持ってもらうこともある。「病気になってから(介護・福祉を)考えるようでは遅い」と本木氏は強調する。

シンポジウムに集まったのは、福祉、NPO、行政担当者ら約100人。新しく開設するサ高住やデイサービスで働く職員も20人強参加した。6人1グループに分かれ、課題解決へのアイデアを話し合った。

ワークショップを企画・運営したのは、NPO法人ミラツク(京都府京都市)。同団体は、オープンイノベーションの手法で、社会的課題を解決する事業を行う。参加者それぞれ職種が異なるため、アイデアを出すまでの「準備」を念入りに行った。ワークショップの時間は、アイデアの発表まで入れて90分間だったが、自己紹介やリソース分解などのアイデア形成をするための準備に45分を費やした。

ファシリテーターを務めたミラツク・西村勇也代表理事は、「互いに背景を共有し、意見を交わし合うことで、短時間で一気に関係性を築き上げ、オープンイノベーションの基盤となるネットワーク構築を主目的にした」と意図を説明する。

また、「施設で取り組めるアイデアの形成、職員のエンパワメント(うちでこんなことできるかもしれないんだ、という発見)と参加者のエンパワメント(自分の持ってるリソースでこんなことができるんだ、という発見)がゆるやかに行われることも併せて見込んだ」。

各テーブルでは、「子育て支援」「地域交流」「多世代の融合」などから解決したい課題を一つ選び、そのための解決策を考えた。なかには、施設のアイドルグループをつくると発表した班も。そのグループには、施設周辺に住む小さい子どもからお年寄りまで入れて、年に1回は総選挙を行うことも考えているという。

今後は10月、11月にも続けてワークショップを行い、事業化するアイデアを絞っていく。

ワークショップには、コープこうべの本田英一組合長理事も参加した。本田氏は、「実際にサ高住で働く職員にとっても、モチベーションが上がったのではないか」と感想を述べた。「福祉に関心を持った人がこれだけ集まってくれた。仕事そのものは厳しいが、その仕事の背景には、こんなに人がいることを改めて気付けたはず」。

コープこうべの本田組合長理事(写真奥)

コープこうべの本田組合長理事(写真奥)

■病院を良くする「ノート」

病院が地域住民と交流していく重要性について、済生会新潟第二病院・斎川克之・地域連携福祉センター副センター長はこう話す。

「普段から病院の中のことを知っておけば、病気になってからの行動が変わる。これからは高齢者は増えていくが、一方で、病院は同様に増えてはいかない。そうしたなかで、病気になったから、すぐに近くの病院に行くのではなく、症状に適した病院を選択して行くことが求められていく」

さらに、施設運営に、地域住民によるボランティアを巻き込むことで、「病院を改善していくことにつながる」と言う。斎川氏は、済生会新潟第二病院で元患者らにボランティアを呼び掛けた人物。その狙いは、職員の作業量を減らすことではない。その病院のモニターになってもらうためだ。

ボランティアには、施設内の気になる点をノートに書いてもらっている。利害関係がないことで、忌憚のない意見が集まり、その指摘の多くが改善につながっているという。

介護業界は低賃金が叫ばれている。さらに、介護の負の部分を中心にした報道により、ネガティブなイメージが定着している。生協が持つ「共助の精神」を生かし、介護・福祉のあり方をどう変えていくのか注目だ。

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