「言語情報で伝わるのは7%だけ」、「相手は製品そのものがほしいわけではない」――。一般社団法人ジャパンギビングの宮本聡事務局長が10月20日、NPO向けに寄付獲得の営業方法について講演した。日本の個人寄付額は7409億円(2014年、日本ファンドレイジング協会)で、米国の3%以下。宮本氏は、「迂闊な支援者コミュニケーションがNPO全体の信頼を失墜させるリスクもある」とし、一人ひとりの営業への態度が寄付市場拡大へのカギになると強調した。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
宮本氏が登壇したのは、クラウド名刺管理サービスの企画・開発を行うSansan(サンサン・東京・渋谷)が開いたNPO向けの新サービス発表会。NPO向けのプランでは、月額1万円で5000枚までの名刺を登録することができる。IT投資が厳しい非営利団体向けに格安でサービスを提供し、名刺を軸にNPOの営業支援を行う。
このサービス発表会に合わせて、非営利団体向けに営業の極意を伝えるため、宮本氏がゲストで講演した。宮本氏は営業力について、「伝える」「聞く」「合意形成」の3つに分けて解説した。
相手への伝え方について、「言語情報は7%しか伝わらない」というメラビアンの法則を用いて説明。93%は、表情・姿勢・視線・身振りなどの非言語情報が占めるとした。
最も力を入れてほしいというのが、「聞く力」。聞くことは、ヒアリング、リスニング、アスキングの3種類に分けられる。特に、相手が積極的に伝えたいとは思わないことを引き出す「アスキング」が重要という。
製品のコアバリューについても触れた。マーケティングの権威セオドア・レビット博士の「ドリルを買いにきた人がほしいのは、ドリルではなく穴である」という格言の通り、製品のコアバリュー(中核価値)を理解して、営業すべきと話した。
宮本氏は前職で不動産営業を行っていた。お客さんは、マンションがほしいわけではなく、マンションを手にして得られる住環境を求めていると気付いてから、営業が上手くいくようになったという。
日本の個人寄付総額は7409億円(2014年、日本ファンドレイジング協会)で、米国(約27兆円)、英国(1兆円)とは大きく遅れを取る。宮本氏は、「日本では共感だけで寄付を獲得できるほど、甘くはない」と言い切る。
しかし、希望もある。内閣府の調査では7割が社会に役に立ちたいと考えていることが分かった。そのような意識があるが、寄付をしない理由として、「お金がない」「資金使途不明」「頼まれない」がある。
さらに、「一人ひとりの迂闊な支援者コミュニケーションがNPO全体の信頼を失墜させるリスクもある」(宮本氏)。だからこそ、誠意ある営業を続けていくことが求められるとした。
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