ソフトバンクはCSR活動として、児童養護施設の卒園者や遺児孤児の支援につながる「チャリティスマイル」を行っている。毎月の携帯料金に10円を上乗せし、同社がマッチングして、中央共同募金会やあしなが育英会に寄付をする仕組みだ。2015年度の児童虐待件数は10万件を突破し、1990年度と比べる100倍に増えている。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

加入者の10円とソフトバンクの10円の計20円を寄付する

加入者の10円とソフトバンクの10円の計20円を寄付する

同社のCSR活動の柱の一つに、次世代育成がある。チャリティスマイルは、その一環として企画された。今年2月から同サービスを始め、加入者は8万人に及ぶ(10月12日時点)。加入者が携帯料金に10円を上乗せし、同社も10円を支払い、計20円を寄付する。

寄付金は、中央共同募金会やあしなが育英会を通して、全国の子ども支援を行う団体へ届けられる。児童養護施設で暮らす子どもたちの自立支援や遺児や孤児向けの奨学金として使われる。国内外で大災害が発生した際は、寄付金の一部が被災地支援を行う非営利団体へ届けられる。

9月末には、計570万円を、子ども支援を行う2団体に寄付した。寄付先は、社会福祉法人「子供の家」(東京都国分寺)と大阪児童福祉事業協会。

子供の家では、児童養護施設の退所者などのアフターケアを行う相談所「ゆずりは」を運営する。大阪児童福祉事業協会は、施設で暮らす子どもたちへ、対人関係を営む上でのソーシャルスキルを教えている。

同社はチャリティスマイルの特設ページをつくり、活動報告を行っている。寄付先の団体に協力してもらい、施設卒園者のインタビューなどを掲載している。チャリティスマイルの担当者である同社の山崎直里・CSR統括部は、「子どもたちが抱えている課題について、もっと多くの人に知ってほしい」と訴える

この企画を立ち上げるにあたって、山崎氏らCSR統括部の社員が児童養護施設の現状視察を行った。施設長らと話し、退所者や卒園者への「自立支援」が課題だと分かったという。

■フォローは卒園後にこそ

現在、国として、施設を卒園した子どもたちの現状把握は行っていない。卒園者は、支度金を施設からもらうが、その額だけでは、マンションを借りて一人で生活していくのは困難だ。そのため、土木作業員として、住み込みで働く者が多いという。

福島の児童養護施設の支援を行うNPO法人BLUE FOR TOHOKU(ブルーフォートーホク、東京)代表の小木曽麻里さんは、「仕事を転々として、長続きしないと聞いている」と話す。

施設にいる子どもたちは、親から虐待やネグレクトを受けたことで小学生のときに、不登校になる子が多くいる。そのため、「学力が足りなく、高校に進学できる子は少ない。その結果、就職先が限られてしまう」と小木曽さんは言う。

チャリティスマイルを担当する山崎氏

チャリティスマイルを担当する山崎氏

子どもの貧困は日本が抱える重要な社会的課題の一つだ。月の収入が14万円以下の家庭で暮らしている子どもの割合は、6人に1人に当たる。しかし、政府が立ち上げた基金への反応は鈍い。子どもの貧困で苦しむ子どもたちの実態が見えづらいという声も聞こえる。

このような状況で、同社には期待が集まる。チャリティスマイルは今年2月に始まったばかり。熊本震災を契機に加入者は増えているという。

加入者の10円にマッチングする仕組みは、2011年の東日本大震災の復興支援として行った「チャリティホワイト」での実績がある。同サービスの累計加入者は299万人(2011年8月から2016年9月30日まで)で、集まった金額は10億円を超えている。

チャリティスマイルを立ち上げた経緯に、チャリティホワイトの仕組みをほかの社会的課題にも応用したいとの考えがある。利用者に解決したい社会的課題についてのアンケートを取ったところ、「子ども支援」が「東北支援」に次いで多かった。だが、その差はほぼ僅差で、ニーズは確実にあることが分かった。

山崎氏は、卒園者のOBOG会と連携して、「広報を強化していきたい」と力を込める。

・チャリティスマイルの特設ページはこちら

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