EARTHLING2011 地球人大演説会 ThinkTheEarth

ユーリィ・ガガーリンの宇宙飛行から今年で50年を記念し、地球人大演説会と銘打ったEARTHLING2011というトークセッションが7月30日・31日と2日間にわたって慶応義塾大学 日吉キャンパスの藤原洋記念ホールにて開催された。
「エコロジーとエコノミーの共存」をテーマに2001年に発足したNPO(非営利団体)Think the Earthプロジェクトも今年で10年目に突入し、それを記念するイベントでもある。

「アースリング(EARTHLING)」は「宇宙人から見た地球人」を意味する言葉で、SF作家のロバート・A・ハインラインが1949年に「レッド・プラネット」という小説で使用したことば。Think the EarthプロジェクトでもEARTHLINGを冠するイベントは今回が初となる。

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まずは茂木健一郎氏と水野誠一氏のトークセッションからスタートした。


茂木健一郎 トークセッション


水野誠一 トークセッション

9・11について

9・11は文明の衝突として捉えられることが多いが、文明のDNAとしての文化の衝突であるように言えると思う。(水野氏)

ブラックスワンという本で、予想外のことが世界を変えていくとある。専門家が全て予想できるという前提で行動するのは危険。専門家が予想出来る・出来ないに囚われず、未来はこうあるべきと希望を持つべき。イギリスのBBCは西洋世界で初めて、モハメッドの生涯をドキュメンタリーで取り上げた。文盲であるモハメッドが神のメッセージを受け止めイスラム教を作ったということが根幹にあるという内容をあげており、表象的なものからつっこんで取り上げていることがすごい。(9・11から)イスラム教の理解は始まった、とも言える(茂木氏)

原理主義のように、脳が凝り固まってしまっていることが危険であるように思う(水野氏)

秋葉原事件の彼も、もし彼女がいたら違っていただろう。ノルウェーの事件も同じではないのか(茂木氏)

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水野誠一 EARTHLING茂木健一郎 EARTHLING

原発について

(対談などの)発言を表面的にとらえて、原発推進派と言われてしまっている。

原子力推進派のドイツ、フランス、日本は敗戦国で、核を持てないことと関係しているかもしれない。将来のオプションとして、プルトニウムを確保しておこうという考えがあったのかもしれない。安全保障は国の根幹に関わる。ほんとうに良く考えなければならない。東電の社員にだって家族がいる。東電だって良い事をしている、尾瀬の保全は東電がしていて、東電が傾いたら尾瀬の保全は誰がするかと心配。原発の問題で意見が二分してしまっているのも心配で、科学への不信感につながってしまわないかどうか(茂木氏)

私は過渡期にあり仕方ないものとして、原発容認派だった。東電から頼まれて、外部委員みたいなものをやったことがある。広報のために、どうしたらよいかアドバイス求められた。原子力は必要なものだが危ないもので、廃棄物処理の問題や災害時の対応の不完全さを認識した上で、事故が起きないように頑張っているんだと広報すべきと発言したが、原子力発電は完璧なもので安全なものだという姿勢を崩さず、その姿勢こそ危ないものだと感じた。

原発は危険、科学は危険と全てを否定する必要は無い。自由に議論をする中で、何が本当に必要なのかを考えていかなければならないと思うが、あまりにも考えていないのではないか(水野氏)

僕が唯一信じるのは技術的なものだけで、技術的な検討無い発言は信用していない。人にレッテル貼って思考停止するのはやめたほうがよい。東電の電力余剰を隠しているなどの陰謀説批判は、オーネストに言ってこなかった広報姿勢のせいで出ている(茂木氏)

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SNSと民主主義、メディア

話はSNSによるムーブメント(チュニジアやエジプトでの政変)についてや、対比してTV局の番組がおもしろくないなど展開。

フジテレビの韓流ドラマが多いことについての陰謀説について茂木氏は、単にマーケット、コマーシャリズム(営利主義)の話であるとして、さらに原発問題についても及ぶ。

原発の問題も、コストが安いからという肯定論があったが、外部不経済つまり廃棄物など考えていくとコスト高で見合わないという考え方も出てくる。

こうあるべき論よりもマーケット論であるべき。(茂木氏)

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幸福の定義

幸福の定義を改めて考えなければならない時代になっている。イギリスのNPOのNEF:NewEcconomyFoundationが発表した指標であるHPI:Happy Plannet Indexというものがある。ブータンのGNHは閉鎖的・特殊な環境での指標であるが、イギリスのシンクタンクが言い出したことで、非常に注目されている。人生の満足度だけではなく、環境の負荷、国への期待度が盛り込まれている。イギリスは74位、日本は75位、アメリカは114位で、コスタリカが1位。

人生の幸福度を再度考えるひつようがあるのではないか(水野氏)

否定から入るのではなく、明確にビジョンとして持つ必要がある。内田百景という小説家が、若い時にお金が無くて、お米をあぶって醤油をつけて食べたらおいしかったと書いている。そういうイメージを持つことが大事。来るべきもののイメージ、ビジョン力を持つこと。ツィッターを見ていると、否定している人が多い。アンチじゃなくて、「こういうのいこうぜ」とオルタナティブなビジョンを育むことがクリエイティブだと思う(茂木氏)

やはりイメージ力はとても大事。茂木さんと松岡 正剛さんとの対談集の『脳と日本人』の中に、枯山水の話が出てくる。水を一滴も流さずに、水を表現しイメージさせるものは日本にしかなく、日本人はイマジネーションの強い民族であるとしている。打ち水をする、風鈴をぶら下げる、すだれを掛けるなど、一服の涼を演出するのは日本人のイマジネーション。世界的な問題に立ち向かうには、こういった日本文化を掘り起こす必要があるのではないか(水野氏)

自分のミッションはハッキリしている。英語でモノを書く人になるため、猛勉強をしている。日本の知識人の中に、国際的なムーブメントを起こしている人はいない。岡倉天心、新渡戸稲造などいたが、日本発のムーブメントは本当に無い。物事を変えるのは現状批判じゃなくてブレークスルー。カテゴリーとしてやってないことがたくさんある。おまかせの文化は凄い。また里山の文化もそうで、体系的な説明として日本人がインサイダーズビューで書いた文献が無い。そういったことでブレークスルーを果たせるのではないか(茂木氏)

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二人のトークセッションの最後は、水野氏の「日本人のたぐいまれなバランス力を発揮すべき」という発言で閉じた。

日本人はいいかげんだとか、あいまいだと評されることがある。自分の奥さんから、昔は本当に「いいかげん」だと言われていたが、今では「良い加減」であるという表現をされる。つまり良いバランスであると。日本人にはバランス力を持っているのだから、これから日本が生き残っていく上で、バランス力を大いに発揮すべきではないか(水野氏)

続いて、岡田武史氏や佐藤卓氏などのトークショーに移っていくが、詳細は別ページにて取り上げたい。

記事:オルタナS 特派員 滝井圭一

撮影:オルタナS 特派員 大下ショヘル