サッカーやフットサルを通して、人と社会をつなぐsocial football(ソーシャルフットボール)と呼ばれるイベントがある。Jリーガーらをゲストに招き、基礎トレーニング後、防災意識を啓発するワークショップを行う。東日本大震災を機に生まれたこのイベントはこのほど、10回目を迎えた。(オルタナS副編集長=池田 真隆 写真=五月女 郁弥)
1月7日、東京・江東区のフットサル場で10回目となる、COLO CUPが開かれた。主催団体は、任意組織のsocial football COLO。social footballは、この団体が名付けたものだ。会場には、子どもから大人まで約100人が集まった。
ゲストには、現役Jリーガーの小野伸二選手、河合竜二選手、平川忠亮選手を迎えた。今回のテーマは、「ダイバーシティとコミュニケーションの大切さ」。参加者は、前半はJリーガーからパスやトラップ、シュートなどの技術指導を受けた。
その後、ブラインドサッカー体験を行った。ブラインドサッカーとは、視覚障がい者と健常者が同じフィールドでプレーできるユニバーサルスポーツ。プレーヤーたちはアイマスクを付けながらプレーする。
監督やコーラーと言われるプレーヤーがフィールドの外側から指示を出し、その声を頼りにプレーする。フットサルと同じ、5人制サッカーだ。
なぜブラインドサッカーをしたのか。その理由は、この競技がコミュニケーション力を磨くことに一役買うからだ。
アイマスクを付けると歩くことさえ困難になる。ボールが見えなくなり、味方にパスを出すことや、ゴールにシュートを打つことなど、至難の業だ。そこで、重要なのが、周囲の声だ。今、どの位置に立っているのか、どこに味方がいるのかを教えていく。そうすることで、初対面どうしだった参加者にも徐々に会話が生まれていった。
ブラインドサッカーを終えると、防災ワークショップを行った。このワークショップのことを、主催団体は、防災が身を守ることから、「ディフェンス・アクション」と名付けた。
当日行ったのは、「伝言PK」。有事が起きたとき、地域の掲示板に、食料の供給時間や物資の配布時間、学校の再開時期などが記載される。スマフォやPCがなく、電波もつながらない状況に置かれたときに、そのような重要な情報を伝えるためには、人々の「伝言」がカギだ。
10人弱でチームをつくり、PKキッカーが順番に伝言をしていき、PKの得点と伝言の正確さを競い合う。
当日の伝言情報は、実際に東日本大震災のときに地域の掲示板に書かれたものを使用した。情報は一言ではなく、長文で、かつ、意味が通りづらい。有事の際には、文章を推敲している余裕もないからだ。
災害が起きて1~3日間は、緊張状態でストレスを感じづらいとされているが、その後、少しずつストレスが溜まっていく。些細な事で住民どうしが衝突することも少なくない。そのような時にこそ、「助け合う精神が大切」と、運営スタッフは参加者に伝えた。
COLO CUPでは、復興支援団体への寄付も参加者に呼びかける。9回目までの寄付金総額は約127万円。
social football COLO代表の荒昌史さんは、「サッカーの人を引き付ける力で、災害の犠牲者を一人でも減らしていきたい」と話す。
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