「外の人間だからできることがある」――。約6年前、三井俊介さんはこの言葉をかけられた。三井さんに話したのは、岩手県陸前高田市広田町の住民。この地は、三井さんが大学を卒業後に単身で移住した港町だ。(小泉 晴香)
東日本大震災が発生して1カ月後、三井さんは東北にいた。そこには、なぎ倒された電柱や崩れ落ちた家の一部などが土地を埋め尽くしていた。
「圧倒的な無力感」、この地のためにいったい自分は何ができるのだろうと三井さんは自問した。そんなとき、地元住民の方々は彼をこう労った。「関係ない人が来てくれたおかげで笑顔になれた」と。
知り合いの誰かは必ず亡くなっているという悲しみに包まれた地。そんな状況で、三井さんらの存在は彼らに力を与えていたのだ。
この土地で活動を始めて6年が過ぎた。徐々に広田町の住民がその力を発揮し出している。三井さんらは地元住民を事業に巻き込み、一緒に地域を盛り上げていく。
クリスマス、東京から来た大学生がサンタクロースの恰好で、地元の子どもたちにプレゼントを届ける企画も行う。子ども向けの企画だったが、「地域のおじい・おばあにも喜んでほしい」という高校生の意見に触発され、広田町の全世帯にプレゼントを届けることにした。
こうして若者の声が実現されるのも三井さん率いるSETの活動の賜物だ。
過疎化が進み、震災の影響で若者だけでなく中年層、高齢者までもが去っていく町にも、地元への愛情や地元を活気づける大きな大きな力が眠っている。
縁もゆかりもなかった広田町に移住し、コミュニティの壁を乗り越えて三井さんはこの地の潜在的なパワーと外の世界をつないできた。彼の頭の中は今、この力を引き出す更なる仕組みの構想でいっぱいだ。
執筆者:小泉晴香
国際協力に興味を持って現在所属している学部へ入学しましたが、関心が日本における問題へ広がっていきました。今は交換留学という当初の予定を変更し、東京でインターンやボランティアを行なっています。東京の機会の多さを生かして、できる限り多くのことを学びたいと思っています。そのこともあってNPO大学へも参加させていただきました。東京で半年間過ごした後は、4月からアフリカへ数ヶ月間行く予定です。