春日大社の式年造替をきっかけに昨年秋、奈良市内で野外音楽祭が開かれた。奈良駅から奈良公園にかけて10個のステージが用意され、古都奈良がさまざまな国の音楽で彩られた。この音楽祭は、次の式年造替となる2035年まで毎年続ける予定で、「ダイバーシティ」(多様性)を発信していく。ダイバーシティ奈良へと向かう動きを追った。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
主催しているのは、春日野音楽祭実行委員会。奈良に看板を置く経営者らの集まりだ。20年に一回行われる春日大社の式年造替が、今年で60回目を迎える。この機会に、新しい奈良の魅力を発信していけないかと考え、「春日野音楽祭」を企画した。
この音楽祭の特徴は住民参加型であること。さだまさしや押尾コータローらプロのミュージシャンだけでなく、公募で集まったアーティストもステージに上がった。フィナーレの奉納大合奏でも、地元住民の吹奏楽団とスペシャルゲストが協演した。
実はこの音楽祭のテーマの一つに、ダイバーシティの発信がある。なぜ、奈良でダイバーシティなのか。
奈良は、多様な文化を受け入れてきた歴史を持つ。シルクロードの終着点として、中国や朝鮮を通して、さまざまな国の文化が入り、成長してきた。
1300年間も「多様性」の土壌を保ち続けてきた背景を踏まえ、奈良こそダイバーシティを発信すべき都市だと定めたのだ。
音楽祭では、世界各国の伝統音楽が演奏された。まだ奈良がダイバーシティだと認識している住民は多くいないため、音楽を通して、伝えていく。
今年は、グラミー賞受賞アーティストであるウィリアム・アッカーマン氏を招聘。奈良から世界へ「ダイバーシティ」を強調した。
■奈良に若者文化を
この音楽祭は参加型だと述べたが、それは出演する側だけではない。企画者もオープンに募っている。なかでも、学生メンバーの動きは注目だ。この音楽祭に合わせて、春日野音楽祭学生チームを結成し、近畿大学や大阪大学などから25人が集まった。
彼/彼女らは、ただ音楽祭当日にボランティアをするだけではない。この音楽祭を起点に、奈良の街に若者文化をつくりだしていく。学生たちはインテリジェンスからの協力を受け、複数回のワークショップや合宿を行う。
奈良で、遺すべきもの・遺したいもの・変えたいもの・新しくつくりたいものの4つをまとめ、企画を考える。学生の案は、春日野音楽祭実行委員に所属する地元経営者らの支援を受け、年末には、奈良市に提案するという。
この音楽祭は、次の式年造替が行われる2035年まで、毎年行われる予定だ。年を重ねるごとに、奈良発のダイバーシティがどう拡大していくのか。そして、学生たちはどんな若者文化を提案するのか楽しみである。
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