龍谷大学農学部(2015年度開設予定)がシリーズで開催している「食の循環」をテーマにしたトークセッションが、大阪府の『「川の駅」はちけんやB1「XingGARDEN」』で開催された。4回目となる今回は、耕作放棄地の再生事業に取り組むマイファームの西辻一真代表をゲストに迎え、「都市と農村をつなぎ、食の循環を取り戻す試み」について、龍谷大学農学部に就任予定の教員らと語り合った。(オルタナS関西支局長=神崎 英徳)
西辻代表はまず、農業に興味のある都市部の人が増えているにもかかわらず、農村と都市とがつながっていないために、一般の人が農に携わるチャンスが少ないことを問題提起。これを受け、トークでは「都市と農村の距離をどう近づけるか」が論点となった。
西辻代表によると、家庭菜園やベランダ菜園など、小規模ながらも農業に興味を持つ人は増加傾向にある。現に、マイファームが運営する体験農園の利用者数は2012年から上昇に転じており、同社の週末農業ビジネススクールに入学する生徒数も着実に増加している。
しかし、「農業をやりたい人がいる一方で、農家の方が休耕地をなかなか貸してくれない」と同氏。その背景には、農業のルールを知らない都市部の人に農地は貸せない、という農家の思い込みがあり、それを解消するためには、都会の人が農業のルールを学ぶ機会を増やすことが必要だと強調した。
都市部の人が農業を知ることの重要性については、植物生命学科に就任予定の古本強教授も同調。「農家への溶け込み方や、人的なつながりの構築など、その土台となる学びを我々が提案することが大切だ」と述べた。
一方、資源生物学科に就任予定の玉井鉄宗教授と、食料農業システム学科に就任予定の香川文庸教授は、別の観点から都市と農村の問題にアプローチ。玉井教授は「食を大切にして、農業をリスペクトできる人が増えなければ、都市と農村をつなぐ問題は解決しない。目の前にある食べものがどのような人とつながっているか、といったストーリーを感じられる教育をしたい」と述べた。
農水省によると、2013年の日本の食料自給率は約39パーセント。これは主要先進国の中で最低となる数字で、国民は約6割の食料を海外からの輸入に頼っていることになる。また、日本の農業就業人口は、総人口のわずか2%。食べる人と作る人の距離が非常に離れている実態が、これらの数字からも見てとれる。
香川教授は、「農に触れることによって初めて、農を大切に考えることができる。そんな簡単に安くておいしくて安全なものは作れない、農業って大変なんだなという意識を持つためにも、消費者はもっと食材の作られ方に興味を持つべきだ」と語った。
これらの発言を受け、西辻代表は「なぜ暑い夏に、冬に旬を迎える、ほうれん草ができるのか。そうしたことに興味をもつことから、農家と消費者との距離は近づいていく」と言及。
若い農家では、トマトのもぎ放題など、消費者の声を聞くためのイベントを開催していることから、「こうしたイベントに参加し、実際に農園に足を運んで、食への関心を高めてほしい」と語った。
トークセッションは全6回開催予定。第5回目の次回は8月30日、『地球規模の問題を解決する「新しい農業」のクリエイトと「食の循環」』をテーマに龍谷大学の瀬田キャンパスで開催。