特定非営利活動法人ReBit(リビット、東京・新宿)は3月30日、中学校教員向けのLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)に関する教材キットの無料提供を始めた。指導案や映像、ワークシートなどが揃っており、多様な性のあり方を伝える授業づくりをサポートする。同法人の公式サイトで無料で公開している。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

「アライ先生」の教材キット、イメージキャラクターは「アライグマ」

■「道徳」でLGBT学習

教材キットの名称は、「アライ先生キット」。アライとは、性的マイノリティの支援者のことを指す言葉。教材キットには、「道徳」の時間に、多様な性のあり方を教えるための指導案や映像素材、ワークシートなどが揃っている。

性的マイノリティは人口の7.8%(電通総研ダイバーシティラボ調べ)とされており、40人のクラスには3人いる割合だ。

思春期を迎える中学生の時期にセクシュアリティーを自覚する人は多い。しかし、周囲からの理解を得られず、いじめを経験した性的マイノリティは68%(性的マイノリティの学校生活に関する実態調査調べ)で、性同一性障害で自殺念慮を抱いたことのある割合は58.6%(電通総研ダイバーシティラボ調べ)に及ぶ。

この背景には、教育現場での取り組みが遅れていることがある。文科省は全国の小中高に性的マイノリティへの配慮を求める通達を出してはいるが、2017年2月に公表された小中学校の学習指導要領の改定案には、性的マイノリティへの記述がなかった。

リビットの薬師実芳代表は、「多様な性について教えるための制度が体系化されてはいない」と指摘する。

一方、現場の先生の意識は高い。日高庸晴・宝塚大学教授が教員向けに行った意識調査では、「同性愛について教える必要がある」と答えた先生は62.8%で、「性同一性障害について教える必要がある」と答えた人は73%だった。しかし、実際に授業で取り入れた先生はわずか13.7%だった。

教材キットには、性的マイノリティの象徴であるレインボーマークのシールも入っており、このシールを付けることで、「相談しやすい先生」を増やしていく

授業で取り入れなかった理由は、「同性愛や性同一性障害についてよく知らない」(26.1%)、「教科書に書かれていない」(19.1%)、「教えたいと思うが教えにくい」(19.1%)などが出た。

そこで、リビットでは先生へ多様な性について学べる教材キットを開発し、性的マイノリティの子どもでも過ごしやすい学校づくりを目指した。中学生の先生には無料で配布し、同団体の公式サイトで無料公開している。

授業を実施した学校では、生徒へアンケートを取り、性の考え方についてどう変わったのか効果測定を行っていく。

・「アライ先生」の申し込みはこちら

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