オーダーメイド型の出版方法で売上を伸ばす会社が本の街神保町にある。オンデマンド出版を手掛けるコンテンツワークス(東京・千代田)だ。同社では主力事業として、家族やペットなどの写真データから、オリジナルの写真集をつくれる「Photoback(フォトバック)」を展開。サイズや紙の重さなどを工夫した「手触り感」を重視し、50万人のファンを獲得してきた。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

取材を受ける荻野社長

コンテンツワークスは神保町の駅から徒歩3分にオフィスを構える。通された室内は、通称「ライブラリー」といわれている。大きい木のテーブルには、フォトバックが均等に置かれている。

テーブルにはさまざまなフォトバックが置かれている。サービス名の由来は、写真を通して思い出を振り返ってほしい(バック)との思いから。ロゴもお客様の大切な「photo」をより良くするための器・背景としての「back」をかけて、太字と細字で表現している

木の温もりに加え、孫と笑顔で写る老夫婦や愛くるしい表情をするペットなどの写真から人の温かさを感じた。出迎えていただいたのは、同社を立ち上げた荻野明彦社長。創業は2001年。もともとこの会社は富士ゼロックスの社内ベンチャーとして立ち上げたものだ。

当時、富士ゼロックスの社員だった荻野氏が社長を務めていたが、資金を増やし事業を継続したいと考えた末、荻野氏が退職金などをほぼ全額使って個人でMBOして社長に就任した。42歳のときだった。

同社の主力事業は、オリジナルの写真集をつくれるフォトバックだ。ユーザーは、写真集に掲載したい写真データを決め、コメントを入力するだけ。サイズもインスタグラムに対応した正方形やA4ノートサイズなど7種類から選べる。

それぞれのサイズに数十種類のテンプレートがある。16ページから120ページまで可能。手触り感を出すためにサイズによって紙の重さを変えている。

最も安いものは、縦9センチ×横12.8センチ/縦12.8センチ×横9センチの16ページで1000円。高いものは、縦18.6センチ×横18.6センチの正方形サイズの36ページで9400円。30代女性を中心に50万人がこのサービスを利用した。法人向けにも行っているが、利用者の9割が個人だ。

選んだ写真から自分が大切にしているものが分かると言う

荻野社長は、「デジタル化が進むが、あえてひと手間かけて紙にすることに価値がある」と話す。さらに、写真集にして室内に飾っておくことで、たまたま目に入り手に取る人もいる。「偶発性のコミュニケーションが生まれる」と言う。

ある顧客は、365日毎日子どもがランドセルを背負って玄関を出る瞬間を写真集にした。親からの愛情を写真で受け、自己肯定観を高めることにも貢献できるという。

若者向けには、「色紙代わりに利用してほしい」と話す。「卒業式の日に、各自がフォトバックを製作し、メッセージを書いて交換し合えばどうだろうか」とその場でアイデアを出してくれた。

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