EARTHLING2011

ユーリィ・ガガーリンの宇宙飛行から今年で50年を記念し、地球人大演説会と銘打ったEARTHLING2011というトークセッションが7月30日・31日と2日間にわたって慶応義塾大学 日吉キャンパスの藤原洋記念ホールにて開催された。「エコロジーとエコノミーの共存」をテーマに2001年に発足したNPO(非営利団体)Think the Earthプロジェクトも今年で10年目に突入し、それを記念するイベントでもある。

「アースリング(EARTHLING)」は「宇宙人から見た地球人」を意味する言葉で、SF作家のロバート・A・ハインラインが1949年に「レッド・プラネット」という小説で使用したことば。Think the EarthプロジェクトでもEARTHLINGを冠するイベントは今回が初となる。

****************************************

このセッションに参加された5名のプレゼン内容を簡単にまとめさせていただいた。

また、中でも3名から若者に向けた映像メッセージをいただくことが出来たので、併せてご覧頂きたい。

瀬谷ルミ子

瀬谷ルミ子 日本紛争予防センター事務局長

瀬谷ルミ子氏はJCCP(NPO法人 日本紛争予防センター)事務局長であり、ニューズウィーク誌の中で、世界が尊敬する日本人25人に選ばれた人物。JCCPは紛争地の人々の自立を支援している団体。ケニア、スーダン、ソマリア、マケドニアなどの地域において活動している。

紛争地と日本をつなぐ話として、アフガニスタンでの武装解除の経験談をされていた。兵士から言われたこととして、「日本人の君だから武装解除に応じる。これが空爆をしているアメリカやイギリスのような連合国の人間だったら、逆に撃ちかえしてやる」と言われたときに、日本もインド洋で空輸支援しているということは言えなかった。その時に、日本は世界の中でどういう役割を果たしているかということを考えなければならないと痛感した。

日本ではこれまで、多額の資金を紛争地への支援に使ってきたが、それが見えないことが問題であるとして現地で活動している団体では語られているとし、出来る範囲で末永く現地と繋がる方法を提示し、紛争地での声無き声を、届ける。受け取る。行動するという選択肢を与えてあげることが目的であり、大事なことと語られていた。

氏の自身の過去のキッカケを含め、若者への映像メッセージを頂くことが出来た。
動画メッセージはこちら

****************************************

冨田沓子
冨田沓子

冨田沓子 アムネスティ・インターナショナル日本

続いてのセッションはアムネスティ・インターナショナル日本の冨田沓子 氏。

アムネスティ・インターナショナルは個人の活動に焦点をあげた人権擁護団体。ある年のアムネスティの成果として、200万通のファックスやメールなどの「声」によって179件の人権侵害の解消につながったエピソードを紹介されていた。

氏のスピーチとして、出る杭は打たれる中学生は嫌だと言って、スイスへと留学された経験や、インドでのグローバルマーチ(インド中を回って児童労働を禁止する法律制定に向けた活動)に従事した経験など、さまざまな貢献活動について話されていた。

エピソードとして、過去に直接救いだした男の子と、たまたまスカイプで繋がり、彼が今では大学を卒業し、自身のつらい過去をようやく本として出そうとしているという話を聞いて、そういったつらい過去を乗り越えていこうとする人がいることを頭の中で常にイメージとして持っていることが行動力にも繋がっていると語られていた。

冨田氏からも若者に向けてメッセージを頂くことができた。
動画メッセージはこちら

****************************************

鎌倉幸子鎌倉幸子

鎌倉幸子 シャンティ国際ボランティア会

鎌倉幸子氏はシャンティ国際ボランティア会の広報課 課長。
シャンティは子供たちに絵本を届ける活動をしている団体。氏は9年間、カンボジアで絵本を届ける活動を繰り広げられてきた。

カンボジアは内戦の影響もあり、教育がしっかりと行われず、識字率が低い。文字が読めなければ、「この水は煮沸させてから飲んでください」と書いてある看板も読むことが出来ない、ビラを配っても効果が無い、と語られていた。
通える場所の存在や、読んでくれた人の温もりは忘れずに残ることの影響が、子供たちが大人になっても残ることの意義も語られていた。

大学時代のキッカケとして、カンボジアの留学生が内戦の話をしてくれた。孤児で、両親が連れ去られ、難民キャンプでの生活。シャンティが与えてくれた本を読む機会によって、知識を得たというエピソードを聞いたことが、氏のシャンティに入るキッカケになったという。

現在は岩手での移動図書館による支援プロジェクトにも従事されている。被災前の写真集を見たいと求められることや、限りある素材でも美味しい物が食べたいと料理本を求められたことを話されていた。

****************************************

渡辺智恵子

渡邊智恵子 株式会社アバンティ代表取締役

株式会社アバンティの代表取締役であり、日本オーガニックコットン協会の副理事長であられる渡邊智恵子氏。

アバンティはオーガニックコットンによる製品を製造販売する企業。児童労働によって綿花産業が成立してしまっている現実があり、インド国内だけでも40万人の児童労働が種子の製造に携わり、学校にも行けず労働させられているという問題を語られ、自社の活動について説明されていた。

また、東日本震災に関する復興支援としてチームともだちの活動内容も紹介。
被災地の方達が作られたクリスマスオーナメントを、被災地以外の方々に買っていただき、がんばれメッセージを書き、サンキューメッセージを返答する。そのサンキューメッセージのひとつに、被災地のこども達が復興状況を大人たちにインタビューをし、こども新聞としてまとめる。といった活動をされている。

****************************************

澤浦彰治
澤浦彰治

澤浦彰治 野菜くらぶ代表取締役

野菜くらぶの代表取締役であり、日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会理事の澤浦彰治氏のセッション。

氏は群馬県で農業を営み、有機こんにゃくの製造・加工・販売などもされている。農業の成功事例の代名詞のように形容されることも多いという。

事例として、栽培されているトマトに関してセッションを展開されていた。トマトの栽培は、モス・フーズのトマトを一緒に栽培してほしいという依頼からスタート。素人の集まりから始まり、失敗の繰り返しで資金は底をついたことがあったが、3年を越すと黒字化。失敗によって技術がついてきたこと、あきらめなかったことが成功に結びついていると語られていた。

また、農業の置かれる現状に対しても言及。耕作放棄地の増加などを受けて植物工場が増加してきていることに対して、通常はレタスは3回しか年間に栽培されないが、なぜ24回も栽培することが出来るのか、素直に疑問に思うと語られていた。

また、現状の日本の「食の豊かさ」についても、本当に豊かなのかと疑問を投げかける。たまたま円高だから、海外から食料を買うことができて、それが円安にふれたらどうなるのか、と。

遺伝子組換え品の許可についても議論が進んでしまっている現状についても、なんのメリットも無いしリスクの方が高いと言及。EUは排除の方向に動いている中で、なぜ日本がシフトしつつあるのかと。何千ヘクタールのような規模のメリットを出せる環境で遺伝子改良品の栽培には経済メリットがあるが、日本のように狭い栽培面積では効果が出にくいこと。また、自然に飛んでいってしまう花粉による他農地への影響も、勝手に人のうちの愛娘に種を付けておいて責任を取れと言っているようなものとして批判されていた。

澤浦氏からも若者に向けてメッセージを頂くことができた。
動画メッセージはこちら

記事/インタビュー映像撮影:オルタナS 特派員 滝井圭一

撮影:オルタナS 特派員 大下ショヘル