小児がんを発症する子どもは毎年2000~2500人。入院生活では外部との接触が制限され、遊び盛りの時期を閉鎖的な空間で過ごすことになります。この状況を改善しようと、難病の子どもとその家族が一緒に滞在・宿泊できる「家のような」医療施設があります。(JAMMIN=山本 めぐみ)

チャイルド・ケモ・ハウスでは小児がんや難病を抱えていても、その子にあったペースで過ごすことができる。小児がん患者は日本全国におよそ16,000人いる

■「がんになっても、笑顔で育つ」

「家のような」医療施設を運営するのは、NPO法人チャイルド・ケモ・ハウス(兵庫県)。立ち上げたのは医師である楠木重範(くすき・しげのり)さん。自身も小児がんを発症し、入院・克服した経験があります。

医療技術が進化し、小児がんの治療も進むなかで、「病気だから」という理由だけで、思い切り遊んだり、家族と食卓を囲んだり、「できるはずのこと」ができないという従来のあり方に、憤りを感じていたと明かします。

「子どもたちは、病気になってただでさえ辛いこと、嫌なことがいっぱいある。がんになったことは不運なことかもしれないけれど、がんや病気であること以外は、他の子どもと何ら変わりなく、苦労せずに笑顔で過ごせる環境をつくりたいと思った」。チャイルド・ケモ・ハウス立ち上げの経緯について、そう話します。

◼︎まるで家のような医療施設

チャイルド・ケモ・ハウス内には、プレイルームなどの共有スペースのほかに、患者とその家族がプライバシーを気にせずに過ごせる19の個室があります。仕事で帰りが遅いお父さんのために、個室ごとに外から入れる玄関や、小さい子どもがハイハイの練習をしたり、付き添いの家族が寝そべることができる畳の部屋、お母さんが家と同じように料理でき、一緒に食卓を囲めるキッチンなど「家のような空間」があります。

畳の居間。施設は太陽の光を多く取り込めるように設計されています

「子どもたちにとっては、当たり前のことが、一番安心できる」。楠木さんは、そう話します。

家族とご飯を食べたり、遊んだり。かけがえなのない当たり前の日常を過ごすことで、子どもたちに自然と笑顔が生まれます。走ったり遊んだりして疲れたあと、お母さんの手料理を、家族みんなで食べられる。子どもに笑顔が増えるのはもちろん、必要な点滴の回数も減ってくるといいます。

◼子どもたちが笑顔で生きる社会の「シンボル」に

小児がんや難病の子どもたちを社会で育てる環境は、まだまだ整備されていないと楠木さんは指摘します。

「普通の病院では、小児がんの子どもたちが心から嬉しそうに笑っている姿や、走り回っている姿が見られなかった。でも、ここでは子どもたちの笑顔を見ることができる。チャイルド・ケモ・ハウスが『がんになっても、子どもは笑顔で育てられる』ことを広く社会に知ってもらうひとつのシンボルになって、今後、病気の子どもたちを育てていく環境が広がっていってほしい」。チャイルド・ケモ・ハウスのこれからについて、そう語ってくれました。

プレイルームには、寄付者の名前が書かれた「ドネーションすごろく」が。大きなサイコロを振って遊ぶことができます

■「夏祭り開催」資金を集めるチャリティーキャンペーン

チャイルド・ケモ・ハウスでは、入院中・入院したことのある子どもたちとその家族を対象に、夏祭りを開催しています。病気のために免疫力が低下し、感染症などにかかりやすい子どもたちにとって、人混みのある場所に行くことは簡単ではありません。そんな子どもたちが花火をしたり、屋台を楽しんだり…普通の子どもたちと同じように夏の思い出を作ってほしいと、入院中・入院したことのある子どもたちとその家族を対象に、毎年チャイルド・ケモ・ハウスで開催しています。

治療中の子どもも安心して楽しめる夏祭り

この度、チャリティーファッション専門ブランド・JAMMIN(京都)と1週間限定でキャンペーンを実施し、Tシャツを販売します。夏祭り開催のための資金のうち10万円を集めます。

「JAMMIN×NPO法人チャイルド・ケモ・ハウス」1週間限定のチャリティーデザイン

Tシャツ1枚につき700円がチャイルド・ケモ・ハウスへチャリティーされます。販売期間は5月29日〜6月4日の1週間、JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINホームページでは、詳しいインタビューも掲載中。あわせてチェックしてみてくださいね。

小児がんになっても、笑顔で育つ。家族と過ごせる「家のような施設」〜NPO法人チャイルド・ケモ・ハウス

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