英国で生まれた化粧品メーカーのザ・ボディショップはこのほど、全世界で化粧品の動物実験を廃止するため、800万人分の署名を集めるグローバルキャンペーンを始めた。2019年までに、800万人分の署名を集めて国際連合に提出する。日本での目標署名数は24万人を予定している。(オルタナS編集長=池田 真隆)
同社では英国の国際動物保護団体Cruelty Free International(クルエルティフリーインターナショナル)と組み、このキャンペーンを行う。同社では2011年に、国際連合に対して子どもの人身売買に関する700万人分の署名を提出した。今回、800万人分の署名を集めることを目標にしているが、同社では過去最大規模だ。
現在、世界の80%の国で化粧品の動物実験が行われている。化粧品の動物実験は、安全性を確かめるために行われるが、その残虐性が問題視されている。
■「鳴かない」ウサギを実験台へ
例えば、「眼刺激性試験」では、ウサギの片方の眼に試験物質を点眼し、その刺激を観察する。眼を手足でこすらないように保定器で拘束された状態で96時間の経過をみるという。ウサギが激痛を感じている場合は、直ちに殺処分される。
「単回投与毒性試験」は化学物質の毒性をはかるために行われる。あらかじめ断食させておいた動物の口へ強制的に試験物質を投与する。中毒症状を2週間ほど観察し、実験後は生死に関わらず、全て解剖される。
ウサギをマウスとして使用する理由は、2つある。涙腺が細く、涙が出にくい特性から試験物質を角膜上に保持しやすいことと、激痛による鳴き声をあげないためだ。
■EU、インドなどは完全廃止
日本では全ての化粧品に動物実験が義務づけられているわけではない。化粧品の安全性保証は、企業が自己責任で行うので承認申請の仕組みはない。しかし、新しく開発したタール色素、紫外線防止剤、防腐剤を配合するときや、配合量が規制されている成分の量を増やしたいときには、動物実験を行わなければいけない決まりとなっている。
動物実験をしないでも安全性を確かめるために、科学による代替法も開発されているが、コスト面から動物実験を選ぶ企業は多い。
倫理的に反している行為に消費者は声を上げ、2013年にはEUが動物実験をした化粧品の輸出入を禁止した。イスラエル、インドでも化粧品の動物実験を完全に禁止した。米国、オーストラリア、台湾などでも、化粧品の動物実験の廃止に向けた法案が検討されている。
日本では、資生堂、マンダム、コーセーなど業界大手が続々と「廃止」を宣言している。だが、中国へ輸出する場合は、動物実験をした化粧品でないといけないため、例外とされている。
クルエルティフリーインターナショナル代表を務めるミシェル・シュー氏は、このタイミングでグローバルキャンペーンを始めた理由について、「各国の政府が動き出しているが、少しずつ方向性が異なっている。一方で消費者は動物実験の完全な廃止を願っている。このタイミングでキャンペーンを行い、各国の足並みを揃えて、動物実験を完全になくしていきたい」と話した。
例外とされていた中国に関しては、「このキャンペーンの目的は世界から動物実験をなくすことなので、当然中国にも他国と同じ条件を与えられる」と説明した。
キャンペーンの名称は、「FOREVER AGAINST ANIMAL TESTING」。オンラインやザ・ボディショップの各店舗で署名を集めている。
・署名サイトはこちら
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