途上国の子どもたちにDVD教材を通して、映像授業を届ける特定非営利活動法人e-Education。これまで途上国14カ国15000名の中高生に映像授業を届けてきた実績がある。同団体を立ち上げた三輪開人氏とはどのような人物なのか。(徳田 千秋=桜美林大学リベラルアーツ学群4年、中山 裕太=中央大学経済学部3年/山﨑ゼミ)
三輪氏は、1986年生まれの31歳。出身は静岡県掛川市。早稲田大学法学部を卒業後、JICA(国際協力機構)に就職した。
学生時代の2010年に同団体を立ち上げたが、JICAの職員として働きながらも活動に関わっていた。団体を立ち上げたきっかけはバングラデシュで見た「ある光景」だ。
同国では、急速な人口増加によって、圧倒的に教師の人数が不足していた。貧困地域の家庭では、教育を十分に受けることができない子どもが多くいた。街灯の下で勉強する子どもを目にしたことで、同国の教育格差に問題意識を持った。
2013年にJICAを退職し、e-Educationの代表に就任した。実はJICAに違和感を持っていたと明かす。
JICAの教育担当部署には中等教育を専門に扱う部署がなかった。JICAのような開発機関では中等教育や映像教育に関する分野は、着手しにくいという。
民間企業でさえも、これらの分野は事業化が難しく、解決策の有効性も確かなものは少ない。三輪氏は違和感を感じるたびに、e-Educationの事業の重要性を感じるようになったという。
第三者であるNGO/NPOだからこそできることがあると考え、2013年に代表に就く決断をした。
2016年7月1日(現地時間)、バングラディシュの首都ダッカの中心部にあるレストランを武装集団が襲撃した。日本人7人を含む人質20人が殺されたテロだ。
テロの実行犯は、バングラディシュ人7人で、うち2人は数年前からイスラム過激思想に感化されていたようだ。
実行犯の7人は、アジア最貧国で最高水準の教育を受けており、犯行現場では外国人に英語で話しかけていたという。
三輪氏は、この事件が起きたのは、「自分のせいではないか」と深く落胆した。自分たちの活動をもう少し早く根付かせ、正しい情報を判断できる能力を持たせてあげれば防げたのかもしれないと悔やんだしかし、三輪氏はこのピンチをチャンスと考えた。
あえてテロの主犯格だった若者たちが通っていた大学を訪れ、講演会を行った。この狙いは、2つある。
一つは教育格差是正を目指して活動する理念を訴えること。そして2つ目は、三輪氏が講演したことを発信することで、バングラデュシュが平和で最高にチャレンジングな国であるということを知らしめるためだ。
e-Educationには定期的にこのような問いが来るという。
「初等教育に解決しなければならない課題が山ほどあるのに、中等教育支援はまだ早いのではないか」
「映像教育支援はまだ早い。パソコンが一台もないような学校でどうやって映像教育支援をするのか」
こういった声をもらうたびに三輪氏は、「まだ早い」という言葉に疑問を覚えた。「まだ早いが今になった時、一体誰が道を作るのだろう。その時のための準備を一体誰がするのだろうか」。
「まだ」と言う以上、遅かれ早かれ「今」になる時はやって来る街灯の下でボロボロの教科書を使って勉強する高校生たちを少しでも減らしたい。
良い大学に行き、良い職に就き、家族を養いたいと思っている中高生の夢を応援したい。そのためにe-Educationは存在し、今後も活動の幅を広げていくだろう。今後の活動に期待したい。
*この記事は日本財団CANPANプロジェクトとオルタナSが開いた「NPO大学第2期」の参加者が作成しました。
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