「不登校の子どもたちを救いたい」――。長崎県の西部にある五島市ではそのような思いから、「しま留学制度」を昨年2016年から始めた。しま留学とは、島外からの小学校3年生から中学校3年生の児童・生徒を1年間受け入れて、教育を行うもの。島全体の活性化が目的だ。しま留学がもたらす五島市への影響や子ども達への新しい教育の形について追った。(武蔵大学松本ゼミ支局=高橋 里奈・武蔵大学社会学部メディア社会学科3年)
しま留学で受け入れる学校は、五島市立久賀小中学校と五島市立奈留小中学校の2校。島外からの小学校3年生から中学校3年生の児童・生徒を1年間受け入れて同校で教育を行う。
長崎県五島市では、少子化・過疎化が進み、多くの小中学校の統廃合が行われた。留学生の受け入れを行っている2校がある久賀島・奈留島共に現在は小中併設校が1校ずつしか開校していない。
この小中併設校も児童数・生徒数は少ないが、久賀島・奈留島共に二次離島であることからこれ以上学校の統廃合を行うことは不可能な状況だ。
島の学校の存続が危ぶまれているが、離島で教育を行うことは多くのメリットがある。
人数が少ないからこそ子どもに寄り添った教育ができる。地域の人の目が届く。友達と家族のような付き合いができる。五島ならではの豊かな自然や歴史を感じ、テレビやゲームではない「遊び」を楽しめることなど、都会とは違った環境でのびのびと成長することができる。
このような魅力に惹かれて2017年6月現在、久賀島には5人(小学校4年生3人、中学校1年生2年生1人ずつ)、奈留島には募集人数3人を超えて4人(小学校4年生,6年生、 中学校1年生,3年生1人ずつ)の子どもたちが留学している。
留学に来るのは、集団生活が苦手な子どもや睡眠時間の乱れなどで悩んでいた子ども、そして、な不登校の子どももいる。
彼/彼女らは都会で生活をしていたころは学校に通えていなかったが、しま留学を始めてからは一度も学校を休んでいないそうだ。子どもたちは「自信を持てるようになった」と、相次いでしま留学の成果を口にする。なかには、「もっと自分を変えたい」と、去年から継続して留学している子どもも2人いるそうだ。
彼らが変わることができたのは、子どもたちの受け入れ家庭である「しま親」や地域の人々、地元の子どもたちの支えが大きいだろう。しま親になるには条件がある。
それは子どもを自分の家族と同じように扱うこと、そして子どもの学校、通学、休日の様子を実親に毎月データとして送ることだ。このような決まりがあるため、実親は安心して子どもを留学させることができるし、一人ひとりに合った適切な教育方法を考えることができるのだろう。
五島市でのしま留学制度は今年で2年目であり、まだまだ始まったばかりだ。現在はポスターやチラシを作成したり、空撮動画や実際に留学した子ども達の声を掲載したホームページを作成したりとPR活動に力を入れる。
今後は更に周知活動に力を入れて、最終的には10名の留学生を受け入れ、島、島の子ども、島の学校、そして受け入れた子どもを変えていきたいという。
現代の日本社会は、情報が溢れており、都会での生活に疲弊してしまう子どもたちも多いだろう。沢山の人々に紛れてしまい自分を見失ってしまうこともあるだろう。
離島の自然に触れ、地域の人々や友達の温かさに触れることのできるしま留学は、そのような子どもたちへの新たな教育の手段になるのではないだろうか。
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