体にとって必要なホルモン・インスリンを生成している細胞を自己免疫が誤って攻撃し、インスリンが体内で作られなくなる「1型糖尿病」。発症の詳しい原因はまだわかっていません。この1型糖尿病を、治る病気にしたい──。最新医療の力を頼りに、1型糖尿病の根絶を目指すNPOを紹介します。(JAMMIN=山本 めぐみ)

■「1型糖尿病」とは

「糖尿病」と聞くと、「食生活の乱れや糖分の取りすぎが原因で発症する」というイメージを持っている方が大半ではないでしょうか。これは遺伝や生活習慣の乱れなどが発症に関係する「2型糖尿病」と呼ばれるもの。

「1型糖尿病」は、遺伝や生活習慣に関係なく、体に必要なホルモンである「インスリン」が作られなくなる病気で、小児期に発症することが多いため「小児糖尿病」とも呼ばれてきました。

インスリン補充のため、注射を打つ男の子

インスリンが体内で不足しているために血液中のブドウ糖を臓器や細胞に取り込むことができず、高血糖の状態が続きます。この状態を放置すると、神経障害などの合併症を引き起こしたり、ひどい場合は昏睡に陥ったりするといいます。食べたものから体内にエネルギーを蓄えるためには、日々の血糖コントロールと、外部からのインスリン補充が必要です。

■インスリン注射、補食…。周囲に理解してもらえないつらさ

インスリン補充が必要な患者とその家族が希望を持って生きられる社会の実現を目指す認定NPO法人「日本IDDMネットワーク」(佐賀)。専務理事を務める大村詠一(おおむら・えいいち)さん(31)は、8歳の時に、この「1型糖尿病」と診断されました。

日本IDDMネットワークの大村詠一さん。大村さんは、元エアロビック競技の日本代表選手でもある

血糖値をコントロールするため、インスリン注射やジュースなどによる補食が必須でしたが、周囲からは変な目で見られたり、「なんであいつだけ特別なんだ」「ずるい」と言われたといいます。

「血糖値をコントロールするインスリン注射や補食は、1型糖尿病患者にとっては命を守る大切なもの。その大切さがなかなか周囲に理解してもらえないというつらさがあった」と当時を振り返ります。

■得ることが難しい「周囲の理解」と「課題」

現在も、1型糖尿病を持つ子どもの保育園や幼稚園への入園拒否や、保護者が毎日子どもの学校へ訪問してインスリンを補充しなければならないなど、多くの課題があると大村さんは指摘します。

また、こういった課題は子どもの患者だけでなく、インスリン補充が必要な高齢者が老人ホームなどで入所拒否を受けるなど、年齡に関係なく生じているといいます。

インスリン補充のための注射。状況や食事内容にあわせて「即効型」や「混合型」などいくつかの種類がある

「インスリン注射は現在、法律によって本人もしくは医療従事者のみ投与が可能で、養護教諭や介護士では打つことができない。サポートする立場の人たちが研修を受けてここを担えるようになっていけば、糖尿病を患っていても安心して生活をできる。こういった課題に対する政策提言もやっていきたい」と話します。

■インスリン補充を必要とする糖尿病を「治る」病気へ

一方で、日本IDDMネットワークは1型糖尿病の根絶(=根治+治療+予防)を目指し、精力的に活動しています。

毎年数カ所で開催している治療法について学ぶセミナーの様子。写真は2016年開催時

「『治らない』とずっと言われてきたこの病気を根絶するために、2025年までに治療の一手法の実現を目指して、第一線で研究している先生に思いを託している」と大村さん。

現在、「バイオ人工膵島移植」というヒト以外の細胞を使ったインスリン補充の研究を進めています。この手法が正常に働けば、外部からのインスリン補充が不要になるといいます。

研究室訪問で。iPS細胞研究所前で長船教授と、研究室訪問に参加した皆さんと

「1型糖尿病は、一生付き合う慢性疾患だと言われてきた。患者によって、何を望むかによって、向き合い方や治療法は実に様々。私自身、この病気とどう向き合うか、選択して生きてきた。しかし『向き合い方』の選択肢だけでなく、その中に『治る』という選択肢をも加えたい。同じ糖尿病患者の人たちに希望を与えたい」。1型糖尿病根絶への思いを、そう語ります。

■1型糖尿病根絶のための研究を応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、日本IDDMネットワークと1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。

集まったチャリティーは1型糖尿病の根絶に向けた治療法を実用化していくための研究助成金として、研究機関へとチャリティーされます。

「JAMMIN×日本IDDMネットワーク」1週間限定のチャリティーデザイン(ベーシックTシャツのカラーは全8色。他にスウェットやパーカーなどあり

JAMMINがデザインしたアイテムには、「夢」や「幸せ」を連想させる四つ葉のクローバーが描かれています。”it always seems impossible until it is done”、「物事がかなうまで、それはいつも不可能だと思われる」というメッセージには、1型糖尿病根絶へ向けて活動を続ける日本IDDMネットワークの強い思いが込められています。

チャリティーアイテムの販売期間は、11月13日〜11月19日までの1週間。JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、大村さんの幼い頃の体験や活動について、より詳しいインタビューを掲載中!こちらもあわせてチェックしてみてください。

毎日のインスリン補充が必要な患者に「治る」という選択肢を〜日本IDDMネットワーク

山本 めぐみ(JAMMIN):
京都発チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」専属ライター。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。

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