東京学芸大の芸術館が2日間、江戸の芝居小屋に変わる。東京学芸大学の学生たちがこのほど、383年の歴史を持つ公益財団法人江戸糸あやつり人形結城座(以下、結城座 東京・小金井市)の公演をプロデュースする。公演日は7月7・8日、同大学の芸術館(東京・小金井市)で開く。すべての演目に英中韓の通訳を付け、江戸文化の大家による解説もある。「伝統芸能」の歴史や成り立ちを教わりながら、十二代目結城孫三郎の糸さばきを楽しむことができる。(オルタナS編集長=池田 真隆)

7月7・8日に公演する「江戸あやつり人形劇」のポスター

結城座は1635年、初代結城孫三郎が旗揚げした、江戸糸あやつり人形芝居の一座。江戸糸あやつり人形の劇団としては、唯一、東京都無形文化財及び国記録選択無形文化財を有する。

十二代目の結城孫三郎は十代目の次男として生まれ、4歳で初舞台を経験した。能や狂言の教えを受け、人形遣いの修行を重ね、1993年に十二代目を襲名した。約70年の芸歴を持ち、女形の名手として知られている。

今回の演目は、大石学・東京学芸大学教授/副学長による、江戸糸あやつり人形の歴史や技法についての解説から始まる。大石氏は、NHK大河ドラマ「新選組!」や「八重の桜」などの時代考証も手掛けている江戸文化の大家。

その後、結城座に最も古くから伝わる「三番叟(さんばそう)」を披露する。五穀豊穣を祈るための踊りで、動きの激しさが見所だ。

「当代一の女形の名手」十二代目孫三郎

そのほかには、厄払いの意味を持つ、「寿獅子(ことぶきじし)」や江戸時代に伊達藩で起きたお家騒動を基にした「伽羅先代萩政岡忠義の段(めいぼくせんだいはぎ まさおかちゅうぎのだん)」、江戸本郷の大火事から作られ、井原西鶴の「好色五人女」にも取り上げられた、「八百屋お七」を披露する。

最後は、上杉謙信の息女八重垣姫の物語、「本朝二十四孝 奥庭狐火の段(ほんちょうにじゅうしこう おくにわきつねびのだん)」。この物語はこうだ。八重垣姫の許婚である武田勝頼が武田家の秘宝・諏訪法性の兜を取り戻すため、上杉家に忍び込む。勝頼の正体を見抜いた謙信は勝頼を暗殺しようと使者を出す。それを知った八重垣姫は勝頼を助けるために、奥庭で兜に祈る。すると、兜に憑いていた狐の霊が勝頼に急を知らせた。八重垣姫の一途な恋の力が生み出した奇跡の話である。

江戸芝居小屋の幟

今回の特別古典公演を結城座とともに企画したのは、東京学芸大学美術家・表現コース 青山研究室。若者世代と伝統芸能をつなげるために、6月16日、19日、22日には江戸あやつり人形についての講演と実際に人形を操れるワークショップを同大学内で行う。外国籍の方にも楽しんでもらいたく、英中韓の訳付きだ。

さらに、入場料も一般は1800円だが、学生は500円。ワンコインで至芸の糸さばきを見ることができる。伝統芸能についていろはから学べる機会なので、これまで見たことがなかった人にもおすすめだ。

【江戸糸あやつり人形結城座特別古典公演】*英中韓翻訳付き、ロビーで展示会開催
とき:7月7日(金)18:30-20:00 8日(土)14:00-15:30
ところ:東京学芸大学 芸術館ホール(東京都小金井市貫井北町4-1-1 )
チケット:学生500円、一般1800円
出演者:十二代目結城孫三郎 ほか結城座人形遣い 大石学(解説)
申込:結城座042-322-9750(10時~18時)へのお電話または、こちらから問い合わせ

十二代目結城孫三郎プロフィール:
十代目結城孫三郎の次男として生まれ、4歳で初舞台。11歳から武智鉄二主宰、武智歌舞伎座に入門。能は観世栄夫、狂言は茂山千之丞の教えを受けながら、人形遣いの修行を重ね、1972年写し絵家元三代目両川船遊を襲名。1993年十二代目結城孫三郎を襲名。芸歴は約70年。女形の名手と呼ばれ、今回は女三種を披露する。

【江戸あやつり人形についての講演と人形体験ワークショップ】
とき:6月中に実施
ところ:東京学芸大学のクラス、近隣市の文化団体・組織、近隣市の文化施設など
定員:100名まで

【東京学芸大学芸術館ホール・ロビーでの展示】
とき:7月5日(水)~8日(土)
ところ:東京学芸大学 芸術館ホール(東京都小金井市貫井北町4-1-1 )
*史料やパネル展示、人形展示などをいたします

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