武蔵大学メディア社会学科松本ゼミはこのほど、現代の市民メディアのあり方について深く学ぶため佐賀県の佐賀新聞本社を訪れた。佐賀新聞は日本で初めて地域SNSを立ち上げた地方新聞社だ。歯止めがかからない新聞離れの解決策として、市民参加型のプラットホームをつくった。(武蔵大学松本ゼミ支局=高橋 太稀・武蔵大学社会学部メディア社会学科2年)
佐賀新聞社が運営するSNSは「ひびの」。ひびのと名付けたのは「日々の生活情報を発信する」ということから。主に、衣食住の情報を発信している。ひびのを立ち上げた初期は佐賀県の子育て支援会員になるための条件の一つとして「ひびの」コミュニティに登録することを必須にしたため4338人の女性会員が登録した。
ユーザー層は20~40代が多く、利用者平均年齢は37.7歳であったそうだ。「ひびの」の中で最も重要な役割を果たすのは日記だ。地域の人々がブログ形式で日記を更新していき、それがお店の口コミ情報につながったり、地域活性化につながることで県内の絆を強めるものとして一役買っている。
佐賀新聞は地域新聞社ならではの取り組みとして、紙面作成において行政面だけでなく地域情報を多く掲載している。子ども向けや若者向け、地元のJリーグチームのファン向け(サガン鳥栖)の別紙の新聞をそれぞれ作ることで、ターゲットに合わせた「新聞」を作っている。
佐賀新聞と「ひびの」との連動も見られる。最近生まれた赤ちゃんの名前と顔写真などを掲載する「ひびのハピバァ」の欄がそれだ。「ひびの」の一部有料の写真共有コンテンツとなる「ひびの写真館」から抜粋した写真を掲載するなど工夫が凝らされていた。
「ひびの」誕生当時は競合SNSとして、mixiがあった。いまでは、twitterやfacebookなど次々と新しいSNSが増えている。多くの利用者がそれらのSNSに流れているなか、、「ひびの」の勢いは決して良いとは言えない。。
だが、地域SNSの存在意義は、地域に根付き、地域の人々に愛される存在であり続けることではないだろうか。であれば、個々人が知識や情報をシェアして集合知をつくり、ローカルエリアでのありとあらゆる情報が集積、循環するプラットホーム型メディアの役割を、ひびのは十分に果たしていると言えるだろう。
従来の新聞は、一方的に、情報を不特定多数の人々に提供していたが、「ひびの」の存在により、メディアと集合知を生む人々が双方向に顔を向き合わせた。
インターネットの発達で、情報過多の時代において、この動きは、ローカルメディアの存在意義の一つになるだろう。
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