内閣官房からシェアリングエコノミー伝道師に任命されている佐別当隆志さん(40)は東京都渋谷区代々木上原にゲストハウスが付いた保育園を建てるため、クラウドファンディングで1億7400万円を集めた。建物は地下1階地上3階建てで、地下1階と地上1階を保育園にし、2・3階をゲストハウスとして提供する。佐別当さんの家族もこの「家」に住み、子どもと大人をつなげるパイプ役になる。(オルタナS編集長=池田 真隆)

Miraie代々木上原のイメージ絵

佐別当さんが企画している建物の名称は、「Miraie代々木上原」。保育園の定員は31人を想定しており、半分を地域枠として、残り半分を提携企業枠として受け入れるという。提携企業枠に入るには、毎月の給与から「子育て拠出金」を納めていることが条件だ。

ゲストハウスは9部屋ほど用意する予定。佐別当さんは2013年から東京都品川区大崎に地下1階地上3階の一軒家「Miraie」を持っており、そこで3部屋をゲストハウスとして提供していた。海外からの観光客や地域住民の交流拠点として、家を開放してきた。このたび、大崎の再開発のため立ち退くことになり、代々木上原に引っ越すことに決めた。

■対峙から「協働」へ

保育園の運営は学校法人正和学園(東京都町田市)に依頼した。オープンに際して、施設長と職員を5人ほど新たに雇用する。正和学園の齋藤祐善・理事長は、「通常の保育施設とは違い、ゲストハウスに宿泊している人とも園児たちが交流する可能性がある。シェアの価値観を持った職員に働いてもらいたい」と話す。

保育園の名称は、「つながりシェア保育園」。認可ではないが、「入園料や質は限りなく認可に近いものを目指す」と言う。齋藤氏によると、ゲストハウスが付いた保育施設は前例がないとのことだ。

では、前例のない取り組みになぜ手を貸したのか。齋藤氏は、「保育施設を運営する事業者と利用者の対立構造から脱却できると感じたから」と話す。「事業者と利用者が対峙するのではなく、協働型で運営していく新しい保育園の形を全国に発信していきたい」。

■1億7400万円をクラウドファンディング

齋藤氏が指摘した「協働型の運営」を可能にしたのが、クラウドファンディングである。実は、このMiraie代々木上原を建設するにあたって、不動産に特化したクラウドファンディングサイト「Crowd Realty」を利用した。

このサイトで、建設予定地の土地代として1億7400万円を集める。8月16日から募集し、27日までに1億7400万円を集めた。

代々木上原の建設予定地。建設予定時期は来年秋。周辺施設には東京大学駒場キャンパス(徒歩5分)、駒場公園(徒歩3分)

寄付型や購入型のクラウドファンディングでは、お金を出した人へのリターンとして、返礼品やイベントの参加権などが付いているが、不動産型のクラウドファンディングでは、お金を出した投資家へは分配を行う。

今回の想定運用期間は36カ月で、想定利回りは6.5%(税引前)。出資金額は1口5万円(最低出資口数は2口)。

この仕組みを取ることで、複数の個人が協働しながら保育施設を運営していけるようになると、齋藤氏は期待したのだ。

■「オルタナティブ教育」を追求

そもそも、佐別当さんはなぜ家に保育施設を設けようと思ったのか。それは、多感な時期からより多くの人と触れ合って過ごしてきた娘の成長を見守るためでもある。佐別当さんの娘は小学校には通わずに、家庭を拠点に学習する「ホームスクーリング」で育っている。

大崎でのMiraieでは、定期的にイベントも開いており、地域住民が集っていた

小学校に通わずに学ぶ「オルタナティブな教育」を追求するために、保育園をつくることにした。子ども連れで日本に観光に来た家族を泊めて、子どもだけを一時的に預かることもできるようにしたいという。

待機児童の数は深刻な社会問題の一つで、代々木上原地区は渋谷区内で最も待機児童数が多い。Miraie代々木上原の定員は31人と周辺の保育施設と比べると小規模だが、ゲストハウス付きの保育園が成功すれば、ほかの地区での横展開が期待でき、さらに、「ゲストハウス付きの介護施設」など異なる領域への応用も見込めそうだ。

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