人口9万人の福岡県・糸島に古民家の学生寮がある。高齢化が進む糸島で「地域に開かれた学生寮」として話題だ。歴史ある古民家で学生たちは伝統や文化も学んでいる。(武蔵大学松本ゼミ支局=下河辺 美優・武蔵大学社会学部メディア社会学科3年)
この学生寮を立ち上げたのは熊本県出身の大堂良太さん。古民家と学生寮が組み合わさった背景には、2018年に九州大学のキャンパスが糸島へ移転してくることがある。学生の居住地の確保が喫緊の課題となり、空き家を活用することになった。
空き家があることで空き巣や不法侵入などの問題が発生するが、大堂さんは「歴史が継承されていないことが問題」と指摘した。
人が住まなくなればその家の歴史や伝統はそこで途絶えてしまう。これを防ぐためにも大堂さんはごく一般的なコンクリートで作られた学生寮ではなく、歴史を持つ古民家に焦点を当てたのだ。
そして、高齢化が進む糸島において若者が地域活動に参加し、交流する場を設ける必要があると感じた大堂さんは「地域にひらかれた学生寮」をテーマにした。
社会人をゲストスピーカーとして学生寮に招き、学生たちとのトークイベントを企画した。
その地域に「住む」ことで、リアルな人付き合いや交流が生まれ、観光で「訪れる」だけでは得られない経験を提供している。大堂さんは、「この経験を学生のうちに味わってほしい」と言う。
こうした学びの場が多く設けられた学生寮で、学生たちは地域住民とコミュニケーションを取り、信頼を築き、学校の座学では学ぶことのできない気づきを得られるだろうと感じた。
大堂さんはいずれ、この学生寮に住んだ学生が仕事や結婚を機に糸島に戻ってくることを願っている。
日頃、コンクリートに囲まれ、広大な田んぼや畑も身近にない、いわゆる都会に住む私はお隣さんと会っても挨拶をするだけ。それが普通だと感じていた。しかし、野菜が取れればおすそ分け、悩みがあれば家族でなくても打ち明ける。
こういった場や関係があることで、人との出会いの素晴らしさを感じることができた。これからこの学生寮に住む学生さんたちにはより多くの人と出会い、その人からたくさんのことを学んでほしいと感じた。
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