現在、両親の共働きやひとり親家庭などの事情で、放課後に学童保育に通っている子どもたちは、日本全国に110万人いるといわれています。放課後に様々なことを経験する子どもたちがいる一方で、家に帰っても誰もおらず、一人で家にこもって過ごしたり、預けられた学童保育で心を塞いだまま時間を過ごしたりする子どもたちがいるのも事実。家庭や経済状況、地域など、生まれ育った環境による子どもの「放課後格差」をなくすために、東京で民間の学童保育を運営しながら活動するNPOを紹介します。(JAMMIN=山本 めぐみ)

■女性の社会進出の裏側で、犠牲になる子どもの放課後

学童保育の歴史自体は浅くありませんが、近年は女性の社会進出が増えたことやひとり親家庭が増えたことによって、学童保育に通う子どもが急増しています。2006年には70万人だった利用者の数は、2017年には110万人と、この10年ほどで40万人増えました。

しかし、利用者が増える一方で、社会の制度が追いついていない実態があると指摘するのは、NPO法人Chance For All(東京・以下CFA)代表理事の中山勇魚(なかやま・いさな)さん(33)。

CFAは、東京都足立区・墨田区で現在、7つの民間の学童保育を運営しています。

CFA代表理事の中山勇魚さん

「行政は働きたい女性を応援しているが、女性が社会進出する背景で、社会や保護者の事情に引っ張られて、結果として子どもたちの放課後が犠牲になっているのではないか」。日本の学童保育が抱える課題について、そう話します。

■スタッフは正規雇用、子どもが安心して過ごせる「生活の場」を提供

「とにかく預かってくれたらそれでいい」「預かっている間に勉強を教えて欲しい」…。子どもを学童保育に預ける保護者たちは、子どもの意思とは別に、放課後の時間に求めることが多いといいます。そうではなく、「子どもが放課後をどう過ごすべきか」という子どもの目線が必要だと中山さん。

CFAが運営する民間学童「CFA Kids」での一コマ

子どもたちが自由に安心して過ごせる放課後を実現するために、CFAが運営する学童保育では、他にはない様々な取り組みをしています。

なかでも特徴的な取り組みの一つが、働くスタッフが皆正規雇用であること。日本では学童保育が重視されておらず、学童保育で働く先生のほとんどは非正規雇用。

パートタイムで働いていることが多く「子どもたちのために何かもっと良いことをしたい」と思っても、現実的に難しいところがあるといいます。

CFAKidsで、先生と子どもたち。時に楽しく、時に真剣に「子どもと同じ目線」で放課後を考える

「全員正規雇用の職員だから、先生も安定して働くことができ、継続して子どもたちと関わることができる。安心して生活できる中で、子どもたちは色々な体験ができる」と中山さん。

「学童保育は、『ただ預ける場所』ではない。100万人もの子どもが通う場所としてはまだまだこれからやらなければならないことだらけ。『生活の場』として、子どもが安心して成長できる環境を整え、質を上げていくことが課題」と話します。

■家庭環境による「放課後格差」を埋める取り組み

経済的に余裕があり、両親が子どもの教育に熱心な家庭では、子どもはいろいろな経験を通じ、刺激を受けて成長していきます。

一方で、保護者が忙しく子どもと会話する時間がなかなかとれないといった家庭で育った子どもは、ほかの子とうまくコミュニケーションをとることが難しかったり、課題を抱えやすかったりといった傾向があると中山さんは指摘します。

イベントプロデュースなどを行う株式会社CRAZYの本社にて、社員の方と子どもたちが一緒にデザイン&ペイントした時の様子

CFAでは、子どもたちと向き合うだけでなく、子どもたちが通うすべての学校を回って先生とも連携をとるほか、半年に1度の保護者との面談を通じ、一人ひとりの悩みや課題に向き合っています。

「日々の現場で子どもたちと真剣に向き合い、生まれた家庭環境によって本来持っていて良いはずの遊ぶ権利や学ぶ権利が奪われてしまわないように、その役目を担っていきたい」。CFAの活動について、中山さんはそう話します。

保護者の方とやりとりをする「連絡帳」。子どもを見守るために、学校の先生や保護者の方との連携は必須だ

■「放課後の大切さ」伝える冊子制作を応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、CFAと1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルデザインのチャリティーアイテムを販売します。

集まったチャリティーは、学童保育の現場で子どもたちの放課後の声を集め、「放課後の重要性」を広く知ってもらう冊子制作のための資金になります。

「JAMMIN×Chance For All」1週間限定のチャリティーデザイン(ベーシックTシャツのカラーは全8色。他にVネックTシャツやノースリーブ・パーカーなどあり)

JAMMINがデザインしたTシャツに描かれているのは、自立を象徴する「旗」を掲げて進む動物たち。放課後、子どもたち自身が切磋琢磨しながら、互いに成長していく様子を表現しています。

Tシャツ1枚につき700円が、CFAへチャリティーされます。販売期間は、9月18日〜9月24日までの1週間。JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、CFAの取り組みについて、そして日本の学童保育のこれからについて、中山さんの詳しいインタビューを掲載中!あわせてチェックしてみてくださいね。

子どもが生きる力を身につける、“本当の放課後”を取り戻せ!ある学童保育の挑戦〜NPO法人Chance For All

山本 めぐみ(JAMMIN):
京都発チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」専属ライター。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。

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