独立系科学者の研究グループ浸透性殺虫剤タスクフォース(以下TFSP)はこのほど、ネオニコチノイド系殺虫剤が及ぼす生態系への影響についての最新調査を発表した。TFSPでは2015年に「評価書」としてまとめていたが、新たに500件の研究結果を加えた。生態系だけでなく食品まで汚染する可能性があるネオニコチノイド系殺虫剤について使用禁止と総合的害虫防除への移行を強調した。(オルタナS編集長=池田 真隆)
TFSPが発表した報告書は、「浸透性殺虫剤の生物多様性と生態系への影響に関する世界的な統合評価書」第2版。2014年以降に発表された500の研究結果をもとに、浸透性殺虫剤が食品も汚染している可能性があることを示唆した。
ネオニコチノイド系殺虫剤は1990年代以降に使われだし、今では世界で最も大量に使われている農薬だ。TFSPでは、ミツバチの急激な減少に関係しているとし、生物多様性、生態系への脅威と警告していた。
フランス国立科学研究センター研究員でTFSP副委員長のジャン・マルク・ボンマタン氏は、「ネオニコチノイド系殺虫剤の使用は環境面で持続可能な農業の実践に逆行する。農家に何ら利益をもたらさず、土壌の質を低下させ、生物多様性を損ない、水質を汚染するだけだ」と言い切る。
トロント大学で生態学を研究するファイサル・ムーラ准教授は、「害虫と闘うには、ごく少量の農薬で事足りる。大半は単に環境を汚染し、非標的生物に広範な害を及ぼすだけである」と述べた。
フランスでは2018年以降のネオニコチノイド系殺虫剤の使用禁止規定を、生物多様性法に盛り込んだ。ボンマタン氏は、「世界中の政府は、フランスに続くべき。持続可能な総合的害虫管理モデルへと速やかに移行すべきである」と訴えた。
日本では、住友化学がネオニコチノイド系農薬の「ダントツ」を販売している。生態系へ悪影響を及ぼすとして、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンなどから、同製品の製造中止を求められている。
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