一つのテレビ番組を制作するには時流を読む力や企画力、コミュニケーション力などさまざまな能力が求められる。こうしたスキルをまちづくりへ生かすことができると考えて生まれたのが「住民ディレクター」という地域活性化手法だ。福岡県で20年前に生まれ、いまでは全国に広がっている。(武蔵大学松本ゼミ支局=市川 仁菜・武蔵大学社会学部メディア社会学科3年)

住民ディレクターを考案した岸本さん

福岡県の中南部に位置する東峰村に、「住民ディレクター」と名乗る人々がいる。彼/彼女らが撮影するのは、「地域住民の暮らし」。

いきなりカメラを向けられると緊張してしまうものだが、日頃から顔見知りであるため、住民の生き生きとした表情を収めることができる。撮った映像は編集し、東峰村のケーブルテレビ局「東峰テレビ」で放送している。

「住民の暮らしの視点から、カメラを回すことで日ごろの暮らしや関係性をありのまま映し出すことができる。これはマスコミにはできない」。こう話すのは「東峰テレビ」プロデューサーの岸本晃さん。

岸本さんは住民ディレクターの考案者だ。番組制作で培う力は地域づくりへ生かせると考え、この制度を思いついた。

岸本さんは14年間、熊本県の民放テレビ局でプロデューサーとして番組制作に携わっていた。地域の情報を発信する番組を制作する際には、地域住民に取材するが、その番組終了後にはせっかくできた関係性が途絶えてしまっていた。

この環境にもどかしさを感じて、地域住民とともに番組制作を行っていこうと考えた。同局を退職し、熊本県内の様々な市町村を中心に住民ディレクターの育成に取り組んだ。そして、2010年に住民ディレクター育成の場のひとつであった東峰村で東峰テレビを開局させた。住民ディレクターがつくるケーブルテレビ局だ。

福岡県東峰村のケーブルテレビ局「東峰テレビ」、「住民ディレクター」として活動することで、地域の魅力を再発見し、地域の中での役割を見出すことができるという

岸本さんは、「住民ディレクターは地域の見守り隊にもなる」と言う。日頃から、住民が地域の暮らしをカメラで納めることで、「変化」に敏感になるからだ。

今年7月、集中豪雨により福岡県と大分県を中心とした北九州地域は、甚大な被害を受けら。土砂にのまれた民家、河川氾濫により岩や巨木が散乱する道路、むき出しの山肌などと凄まじい豪雨の爪痕が東峰村にも残る。

住民ディレクターだけでなく岸本さんも災害現場に駆けつけ撮影した。映像をもとに、住民の防災意識を向上させ、行動まで促すことが「東峰テレビの役割」とする。

今後、「住民ディレクター」から多くの「地域プロデューサー」が生まれるだろう。地域の課題を地域住民が解決してく未来を岸本さんは見据えていた。



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