「クリニクラウン(臨床道化師)」をご存知ですか?病気の治療のために様々な制限を余儀なくされる入院中の子どもたちを定期的に訪問し、思い切り笑い、自ら進んで遊ぶことができる「こども時間」を届ける活動をしています。クリニクラウンとは何か、病院訪問を見学させてもらいました。そこで見えてきたものとは。 (JAMMIN=山本 めぐみ)

大阪府内の小児病棟を訪問

大阪の病院を訪れたクリニクラウンの「う〜み」(右)と「マーニー」。訪問前、病棟の廊下で

「認定NPO法人日本クリニクラウン協会」(大阪)は、2005年からクリニクラウン(臨床道化師)を小児病棟に派遣し、入院している子どもたちが本来の力を取り戻し、笑顔になれる環境をつくるために活動しています。

2018年の年末、大阪府和泉市にある「大阪母子医療センター」を訪問するクリニクラウンを取材しました。ここはクリニクラウンが日本で最初に訪問した病院で、日本クリニクラウン協会にとってホームグラウンドのような病院なのだそうです。

病棟の廊下を、動きを合わせてダンスしたり、ハーモニカを吹いたりしながら進む二人。二人の姿を見て、中には「あっ!」と指をさして追いかけてくる子どもも

衛生管理が徹底されているため、訪問にあたっては問診票や健康診断票、抗体検査結果及びワクチン接種証明書が必要になります。私も事前に感染症に関する問診票を記入し、当日はクリニクラウン協会の皆さんと合流してから、検温。

風邪をひいていたりすると、場合によっては取材延期になることもあるのだそう。医療機関であるという緊張を感じた瞬間でした。

この日は、クリニクラウンの「う〜み」と「マーニー」の二人の訪問の様子を見学させてもらいました。

訪問前の入念な準備と打ち合わせ

クリニクラウンが使用する小道具や玩具類は、事前にすべて入念に消毒。感染予防のため、手洗いと手指消毒は必須。そのため長袖ではなく半袖の衣装を着用する

通常は1回の訪問で2病棟をまわるのだそうですが、この日は1病棟で感染症が流行っているとのことで訪問はお休み。長期入院の子どもが多くいるというもう1病棟のみを訪問するとのこと。

15時からの病棟訪問にあわせて、う〜みとマーニーは準備に入ります。

クリニクラウンが使用する小道具や玩具は、すべて消毒。感染予防のため、手洗いと手指消毒も必須です。

さらに、もう一つ大事な行程があります。「カンファレンス」と呼ばれるもので、現場の医療スタッフさんから訪問する各部屋の子どもたち一人ひとりの状況を細かく聞き、留意点を確認します。

カンファレンスで真剣な表情で、看護師長さんの話を聞く二人

「○号室の方はこれから検査なので、そっとしておいてあげた方がいいかも」「感染予防のためアイソレーター((感染予防のための装置。ベッドの頭側に設置され、一定の風速できれいな空気が送られる)がついているので、先に回ってあげてください」といった医療的な内容から、「ここに入ってきたばかりなので、クリニクラウンさんに会うのが初めてだと思います」「最近まで病状がすぐれず、親子共々ストレスを抱えていたと思います」といったメンタルな面まで。

一つひとつの話を真剣な表情で聞きながら、病棟のマップの中のそれぞれの部屋の場所にメモを書き込むクリニクラウンの二人の姿が印象的でした。

病気の子どもたちは免疫力が低下しているため、感染症などにかかりやすくなっています。「それぞれの部屋の子どもの状況や体調を把握した上で、接触して良いのかNGなのか、おもちゃの受け渡しはOKなのか、すべて確認してから訪問をスタートしています」と話すのは、同行してくださった日本クリニクラウン協会の熊谷恵利子(くまがい・えりこ)さん。

「命と向き合う現場なので、『(感染源を)持ち込まない・持ち出さない』を徹底しています。クリニクラウンたちは、マスクの着用や手洗い・消毒はもちろん、ガウンコントロールといってガウンを身につけて予防したり、医療用手袋などで予防したりすることもあります」と衛生面への徹底したスタンスを教えてくれました。

いよいよ訪問がスタート

「NOSE-ON(ノーズ・オン)!」。赤い鼻をつけて、クリニクラウンに変身!

さて、カンファレンスの後、クリニクラウンの象徴である「赤い鼻」をつけて、いよいよ病棟訪問がスタート。

中からう~みとマーニーの楽しそうなしゃべり声と、子どもの笑い声が聞こえ、病室の窓から、皿回しをするう~みの姿や、カラフルなスカーフをフワフワさせて遊ぶマーニーの姿が見えます。

一緒に皿回しをしたり、おしゃべりしたり。病室の窓から見えた楽しそうな姿

「最初は硬い表情の子どもも、様子を感じ取りながら徐々に関係を縮めていきます。そうすると、ふわっと緊張が解ける瞬間があるんです。その一瞬に、お母さんやスタッフさんも喜んでくれる。クリニクラウンだからこそできる、距離の縮め方があると思っています」と話すのは、普段はクリニクラウンとしてこの病院を訪問している日本クリニクラウン協会の林優里(はやし・ゆり)さん。

別の日の訪問の一コマ。子ども一人ひとりの状況に合わせて関わり方をかけていき、その子の今・その時の気持ちに寄り添う

「声のトーンだったり、早口だったり、はしゃいだり。場合によっては、サイレントで動きだけでコニュニケーションすることもあります。子ども一人ひとりの反応に合わせて、子どもの気持ちを持ち上げていきます。一番大切にしているのは『ライブ感』。クリニクラウン自体が、その時その場で生まれる感情を大事にしていて、子どもの反応や様子を感じ取りながら、一人ひとりに合わせた対応をしています」と熊谷さん。

日本クリニクラウン協会の林さん(左)と熊谷さん

ご両親が一緒の場合は、お父さんお母さんも巻き込んで、また別の患者さん同士で同室の場合は、クリニクラウンが入って一緒に遊ぶことで、交流のきっかけが生まれることもあるのだそうです。

この日は、2時間近くかけて1病棟17人ほどの子どもたちと接したクリニクラウンの二人。クラウンの赤い鼻を取るまで、疲れた顔一つ見せずに、子どもたち一人ひとりと真剣に、そして本当に楽しそうに、笑顔で向き合う姿が印象的でした。

「クリニクラウンに求められていることは何か」

子どもたちとクリニクラウンのやりとりを見るスタッフの表情も、自然と笑顔に。「『いつもと違うこどもたちの表情が見られて、こどもの成長を感じる瞬間になっている』という感想を病棟スタッフからいただくことも」(林さん)

訪問終了後、この日のクリニクラウン「う~み」こと直理(なおり)うみさん、「マーニー」こと中野栄知(なかの・まさのり)さんも交えて、お話をお伺いしました。

クリニクラウンになって4年目の直理さんは、普段は医療現場で働いています。

「子どもに寄り添いたいけれど、医療スタッフとしての業務が忙しかったり、子どもたちにとって、医療スタッフはどうしても『痛いことをする人』だったり…。もどかしく感じていた時に、クリニクラウンと出会いました」

「我慢して治療に耐えている子どもたちは、医療スタッフやお父さんお母さんに話せない部分や、素を出せないところがあります。親でもスタッフでもないクリニクラウンだからこそ『本来のこの子なんだな』という姿を引き出した時に、うれしくてやりがいがあると感じます。『自由でいいんだよ。私たちが自由だから』。そんなメッセージを伝えられたらと思っています」(直理さん)

皿回しに挑戦。「子どもたちのやってみたいという気持ちを引き出し、遊びを通してこどもの成長や発達を支えます。ワクワクしたりドキドキしたり、時には真剣なまなざしであったり、こども達の心が動く瞬間を届けています」(熊谷さん)

「僕たちは定期的に訪問することを大切にしていて、自分も2回、3回と訪問させてもらう子どもがいますが、毎回子どもたちの変化や成長を実感します。
常に楽しさを感じてもらえるよう、『クリニクラウンに求められていることは何か』『クリニクラウンだからこそできることは何か』を常に考えながら活動しています」(中野さん)

あえて遊びにフォーカスする

クリニクラウンが「遊び」という共通体験を通じ、立場を越えて、病棟の人と人とを笑顔でつなげていく

闘病中の子どもたち一人ひとりと触れ合う際、子どもたちのつらい思いを感じ、何かそこに対してアクションを取ることはあるのか?という問いを投げかけてみると、お二人からは次のような答えが返ってきました。

「クリニクラウンは、闘病中の子どもたちやそのご家族にとって『一緒に楽しい時間を過ごす友達』。痛みや苦しさを共感するのは現場の医療スタッフですが、僕らに求められているのは日常とはまた異なる空気や、そういうものをこの瞬間だけでも持ち込むこと」

「だから、『痛いよね』『しんどいよね』と言うのではなく、あえてそこには触れず、遊びにフォーカスし、おもしろおかしく接して、子どもたちやご家族が病気のことを少しだけでも忘れられるような時間になればと思っています」(中野さん)

「入院中、子どもたちは同じ環境、同じ景色の中で生活することを余儀なくされます。でも、クリニクラウンが来て、たとえばスタッフさんや看護師さんを巻き込んで一緒に体を動かしたりして遊んだりした時に『実は助けてくれる存在がそばにいるんだよ』ということにも気づいてもらえたらなという思いもあります」(直理さん)

2020年までに、1.5万人の子どもに届けたい。クリニクラウンを応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、日本クリニクラウン協会と1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。「JAMMIN×日本クリニクラウン協会」コラボアイテムを1アイテム買うごとに700円がチャリティーされ、クリニクラウンを各地の病院に派遣するための資金に充てられます。

2017年、大阪のスタジオにクリニクラウンが集まって撮影。「クリニクラウンの活動は、たくさんの人達に支えていただいています。ありがとうという感謝の気持ちを伝えたいと撮影した1枚です」(林さん)

「現在26名のクリニクラウンが活躍し、2017年度の実績では全国47病院へ301回の訪問で、9,428人の子どもたちに会うことができました。現在も新規クリニクラウンの募集かけているところですが、今よりさらに多くの仲間や資金が必要になります。たくさんの方に、『こども時間』の大切さを知ってもらい、応援してもらえたらなと思っています」(熊谷さん)

「JAMMIN×日本クリニクラウン協会」1週間限定のチャリティーアイテム。写真はベーシックTシャツ(3,400円(チャリティー・税込)、カラーは全9色)。他にも七分袖Tシャツやキッズ用Tシャツ、パーカーなども販売中

JAMMINがデザインしたコラボデザインに描かれているのは、ベッドから溢れ出るように描かれた楽器や玩具など『こども時間』を象徴するアイテム。クリニクラウンの活動により、ベッドの周りが笑顔あふれる空間に変化する様子を表現しました。

チャリティーアイテムの販売期間は、1月21日〜1月27日までの1週間。チャリティーアイテムは、JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、クリニクラウンの病棟訪問の様子をより詳しく紹介中!クリニクラウンの皆さんの詳しいインタビューも掲載しているので、こちらもあわせてチェックしてみてくださいね!

入院中の子どもたちに、「子どもに近い存在」だからこそ届けられる「こども時間」を〜NPO法人日本クリニクラウン協会

山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしている京都の小さな会社です。創業6年目を迎え、チャリティー総額は2,700万円を突破しました。

【JAMMIN】
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