6人に1人の子どもが貧困にあるといわれる現在。しかし、一見して「貧困を抱えている」と周囲が気づけることは少ないのではないでしょうか。また、貧困は家庭の問題や家族関係など様々な要因と複雑に絡み合っており、ここを周囲の人たちがサポートしていくのはそう容易いことではありません。宮城県を拠点に、学習支援やフリースクール、子ども食堂を通じ、生きづらさを抱えた子どもたちを「地域で見守る」活動を行っているNPOを紹介します。(JAMMIN=山本 めぐみ)

■生活困窮世帯の子どもたちの学習をサポート

宮城県内を中心に、生活困窮世帯の子どもたちを対象に自治体と協働した学習支援事業を展開するほか、不登校児のためのフリースクール運営などを行うNPO「アスイク」(宮城)。生活保護や児童扶養手当を受けている世帯の子どもたちは、無料で通うことができます。

仙台市と協働で運営している学習支援事業の様子

「貧困の背景には、社会からの孤立や親子関係の問題、虐待など、複雑な課題が絡み合っている。生活困窮世帯の子どもへの学習支援を通じて、目に見えにくい家庭の課題に気づき、子どもだけでなくその家族も含めてサポートをしていきたい」

そう話すのは「アスイク」代表理事の大橋雄介(おおはし・ゆうすけ)さん(37)。

アスイク代表理事の大橋雄介さん

6年前の東日本大震災の直後、学校再開の目処が立たない中、避難所内で居場所がなく退屈そうにしている子どもたちを目の当たりにした大橋さん。「このまま避難生活が長くなると、周りの子どもたちから学習の面で取り残されてしまう」と避難所で学習支援活動を始めたのが、活動のきっかけだったといいます。

震災から3週間後の2011年4月3日には、第1回目となる学習サポートを避難所で実施。その際の子どもたちの笑顔が忘れられないといいます。

■被災地での学習支援で見えてきた「社会の課題」

被災地の復興が進むにつれ、学習サポートを開催する場所も避難所から仮設住宅へと移っていきました。そんな中で見えてきたのは、先行きの見えない中で不安を抱える大人たちの姿だったといいます。

2011年4月3日、第1回目の学習サポートにて。周囲の人たちに迷惑がかからないよう、避難所のロビーでの実施だった

「当初は子どもへの学習支援だけを行っていたが、次第に子どもを介して大人たちの不安の声を聞くようになった。不安を抱えた大人たちのストレスが、家庭の中で子どもたちにも影響していくのではないか──、そんな問題意識を抱き、ただ勉強を教えるだけでなく、子どもの声に耳を傾けられる環境づくりをしたいと思うようになった。学習支援だけではない部分も包括的にサポートするように、支援のあり方のコンセプトが変化していった」と振り返ります。

現在、アスイクでは子どもへのアプローチを足がかりに、自治体とも協働しながら、その子だけではなくその家族も含め地域でサポートするという体制をとっています。

■地域で支え、子どもたちが一歩を踏み出せる場を

「地域で問題への理解を促し、生活困窮に陥っても人や地域とつながり支え合っていくことで、当事者が困りにくい包摂社会をつくっていきたい」。活動への思いを、大橋さんはそのように語ります。

最近では、子どもの居場所を新しく立ち上げたいという市民を発掘して研修を行い、運営や資金面のアドバイスをする間接的な支援事業にも力を入れています。

アスイクが運営するフリースクールにて、子どもたちと手作りのクリスマスパーティを実施した時の様子。子ども一人ひとりと向き合うことを大切にしているという

「親子で生活困窮に陥り行き詰まってしまった時、SOSを誰にも発せずに孤立するのではなく、気軽に相談できて、問題解決への糸口をつかめる場所が必要。たとえ簡単には解決しない問題であっても、一緒に考えることや、一緒に考える人がいるというところに、一つ大きな意味がある。私たちの活動で、そんな場所を提供できれば」と話します。

また、アスイクの活動を利用する子どもたちにとって、活動の場は「親以外の大人」と出会う場所。そこについて、大橋さんは「たくさんの大人たちと出会うことで、“こんな生き方もあるんだ”と視野を広げ、何かを感じ、学び、自力で一歩を踏み出すための場所をつくっていきたい」と語ります。

■生活困窮世帯の子どもとその家族を見守る活動をサポートできるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、アスイクと1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルデザインのチャリティーアイテムを販売します。

集まったチャリティーは、アスイクが宮城県多賀城市で運営する「多賀城こども食堂」の食材費となります。

アスイクが運営する「多賀城こども食堂」にて、子どもたちのリクエストで作ったひな祭りのメニュー

この子ども食堂の対象者は事前に申し込んだ生活保護や児童扶養手当、就学援助等を受けている小学生〜高校生までの子どもたちとその家族に限られており、食事だけでなく「生活困窮世帯子どもたちとその家族を見守る」ことが、運営の大きな目的です。

現在は寄付でまかなっているこの食堂の運営を続けていくために、資金が必要です。今回のチャリティーで、参加者20人分の20食分の食材費・12万を集めることが目標です。

「JAMMIN×アスイク」1週間限定のチャリティーデザイン(ベーシックTシャツのカラーは全8色。他にスウェットやパーカーなどあり)

JAMMINがデザインしたコラボデザインには、レタスやトマトなどの食材に混ざり、ペンや本がはさまれたハンバーガーが。アスイクの活動のひとつである生活困窮世帯の子どもへの「教育支援」と「子ども食堂」を描きました。「たくさん学び、たくさん食べ、共に目の前の問題を解決しながら、より良い明日を築いていってほしい」というアスイクの思いが込められています。

Tシャツ1枚につき700円が、アスイクへチャリティーされます。販売期間は10月30日〜11月5日までの1週間。JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、大橋さんの思いや、アスイクの活動についてより詳しいインタビューを掲載中です。こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

人との「つながり」を提供、貧困家庭の子どもを地域で見守り、一人にしない〜NPO法人アスイク

山本 めぐみ(JAMMIN):
京都発チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」専属ライター。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。

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