中学・高校生向けにSDGs(持続可能な開発目標)を教える教材づくりが始まっている。SDGsとは、国連が2030年までに解決すべき社会的課題を定めたアジェンダ。テストで高得点を取るためでなく、社会環境の変化を知り、これからどう生きるのかを考えながら学ぶ。(オルタナS編集長=池田 真隆)

Think the Earthの上田さん(左)と監修する慶応義塾大学の蟹江憲史教授

この取り組みを行っているのは、一般社団法人Think the Earthを中心とした任意組織SDGs for School実行委員会。教材では、SDGsで定めた17のグローバルイシューについて、専門家による解説やその課題にアプローチしている活動事例などをまとめた。A5でフルカラーの160ページ、定価は2000円前後の予定だが、学校へは無料で配布する。

中学・高校生向けなので、テキストだけでなくビジュアル情報を多めに入れて制作するという。知識を付けることが目的ではなく、一次情報をもとに生徒どうしでその問題を話し合い、解決策を考えて、アクションまでつなげることが目的だ。

教材の使い方は制限しておらず、各教科の先生の指導法に任せる。座学でも、フィールドワークでも活用できるような作りにするという。

現在、クラウドファンディングサイト「Makuake」で製作資金を募っている。目標金額は500万円。

Think the Earthでは2003年から、お金や気候変動、水などについてまとめたビジュアルブックを製作し、全国4万5000の小・中・高校に届けてきた。約300人の学校の先生とつながりを持っており、今回の教材づくりでも意見をもらった。

今後の予定は、2017年度に書籍を完成させ、2018年度の新学期に合わせて希望校へ配布する。夏休みには先生向けの研修を開き、2019年3月には活動報告会を開く予定だ。3年間で300~500校に届けることを目標にしている。

■「学びの『笑顔』増やしたい」
 

SDGsでは2030年までに解決すべき17個のグローバルイシューが定められている

Think the Earthの理事で、この本の編集長を務める上田壮一さんは、「単純にSDGsを紹介する本にはしたくない。読むことで未来をつくることが楽しいことだと気づいてほしい」と強調する。SDGsでは2030年までに解決すべきグローバルイシューが17個掲げられており、世界193カ国がこのアジェンダの達成を目指すことに合意している。
 
企業や団体だけでなく、「自分たちもこの取り組みに参加できると認識し、未来は変えられるという確信を持ってくれたらうれしい」と述べる。
 
上田さんがこの書籍をつくろうと考えた背景のひとつには、子どもたちがテストの点数を取るためだけに勉強するようになったことがある。受験が近づくにつれて、その傾向は高まり、「学校から『笑顔』が消えていく」と現場の教師から聞いたことを明かす。
 
「本来、知らないことを知ることは新たな可能性を見出すので、楽しいこと。SDGsをもとに学ぶ楽しさを思い出してほしい」(上田さん)

多感な時期から、貧困や生物多様性、ダイバーシティなどグローバルな視点で課題をとらえることで、その後の物事の考え方に影響を及ぼすだろう。上田さんは、「10年~20年掛かるかもしれないが、教育を変えることで社会は変わっていくはず。周囲に流されることなく、未来に対する自分の考えをもち、他者に目を向けることができる大人に育ってほしい」と語った。

193カ国が合意した世界共通の目標=SDGsの書籍をつくり全国の学校に届けよう!


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