「今の子どもたちは、私たちの想像以上にがんじがらめ。試験や受験に追われる中で『生き方を考えないと』と焦っている子も多い。親や先生から同じようなことを再三指摘され、ストレスを感じている子どももいる」――岡山を拠点に、「若者」と「地域でカッコよく生きる大人」をつなげる場づくりが始まっています。主催するのはNPO法人だっぴ。地元の高校生や大学生、若手社会人を対象にしたイベントの他に、近年は義務教育の中でも子どもが大人たちと交流できる場を設けたいと、中学生向けのイベント「中学生だっぴ」に力を入れています。(JAMMIN= 山本 めぐみ)

「こんな大人になりたい」「自分もこんな風に生きたい」。そんな風に思わせてくれて、その後の人生に影響を与えてくれた大人の存在。皆さんにも、一人はいるのではないでしょうか。

■若者に「出会いの場」を

NPO法人だっぴが主催するイベント「中学生だっぴ」での一コマ。大人と子どもが立場を超えたフラットな関係性で思いを話し合える場

若者と大人をつなげる、NPO法人だっぴ代表の柏原拓史(かしはら・たくし)さん(39)は、活動を始めたきっかけについて次のように語ります。

だっぴ代表の柏原拓史さん

「身近にカッコいい大人、素敵だなと思える大人がいたとしても、その人たちと接することがなければ、子どもたちはずっとそれを知らないまま、大人になる。『地元には面白い人がいない』『自分がなりたい理想の大人が近くにいない』と感じて都会へと出てしまう若者もいる中で、実は身近なところにもカッコよく生きている大人がたくさんいるということを知ってほしい」

自らを振り返っても、人生のターニングポイントには必ず「出会い」が関わっていたという柏原さん。「良い出会いに恵まれている人は、本当にたくさんの人と会っている。たくさんの大人との出会いを通じて、将来へのビジョンや、道を切り拓く勇気を持ってくれたら」。そんな思いで、活動を続けてきました。

■地域の大人とつながることで、子どもたちが得る「気づき」

大学生や若手社会人などが実行委員となって運営し、自分たちで「会いたい大人」を50人探してきて作り上げるイベント「だっぴ50×50」。写真は、フィギュアスケート国際大会のメダリストブーケを制作しているフラワーエンターティナー・萬木善之さん

柏原さんの地元・岡山の中学校で開催される「中学生だっぴ」は、中学生の子どもたちが「大人とつながる場所」。地域の高齢者から、地元企業の人たちまで、参加する大人はさまざま。

イベント自体は、初対面の大人・子どもを含む8〜9人で一つのグループになり、進行役から出された「お題」に対してそれぞれがフリップに答えを書いて見せ合い、回答を話し合うという流れで進められます。

この「お題」がイベントのひとつのポイントだと柏原さん。

「実行委員が毎回考えているが、たとえば『生きる上で必要なものは?』『勉強する意味って何?』『どんな大人になりたい?』といった、基本的に答えがイエス/ノーで終わらないものを問うようにしている」と話します。

「お題」の答えを各自記入したフリップを見せ合う瞬間。十人十色の回答に思わず笑いが

そうすることで、それぞれの回答者の過去や考え方などの自己開示がしやすくなり、子どもたちにとっては、普段接することのない大人の考えや経歴を聞いて興味のスイッチが入ったり、いつも同じ教室で勉強している同級生が「実はそんなことを考えていたんだ」と刺激を受けるといいます。それぞれの考えを深く話し合うことで、いろいろな気づきを得られるのです。

と同時に、「大人が自分の話を聞いてくれた」と自己肯定感が得られたり、「自分のことを親身に話してくれた」と大人への信頼度が上がるといいます。

■新たな出会いが「人生」考えるきっかけに

「中学生だっぴ」で。話し合っていくうちに徐々に緊張がほぐれ、参加者全員が、安心して自分のことを話せる雰囲気が生まれる

「今の子どもたちは、私たちの想像以上にがんじがらめ。試験や受験に追われる中で『生き方を考えないと』と焦っている子も多い。親や先生から同じようなことを再三指摘され、ストレスを感じている子どももいる」と柏原さんは指摘します。

「親や先生が、なかなか面と向かって言えないこともある。まったく新しい大人との出会いが、日常の中でふっと立ち止まり、より深く自分の人生を見つめる瞬間になる」と、活動への思いを語ります。

「大人になりたいと思った」は、参加した生徒の感想。素敵な大人との出会いが、子どもの未来を明るく灯す

実際に、参加した子どもたちからは「将来が楽しみになった」「大人のことがあまり好きではなかったけれど、話を聞いてもらって好きになった」「自分の考えを話すことに自信が持てた」、そんな声が聞かれるといいます。

「(活動拠点である)岡山は、東京のように大都市でないが、『世界は、本当はもっと広いんだ』ということ、それを感じさせてくれるような活き活きと生きる大人が近くにいるんだということを、感じてほしい。岡山で活動してきたノウハウを生かして、今後は活動を全国にも広げていきたい」と、今後の夢を語ってくれました。

■新たな中学生に「大人との出会いの場」を届けるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、「だっぴ」と1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。

集まったチャリティーは、新たな中学校で、地域の大人たちとの出会いを届ける「中学生だっぴ」を開催するための資金となります。

「JAMMIN×だっぴ」1週間限定のチャリティーデザイン(ベーシックTシャツのカラーは全8色。他にスウェットやパーカーなどあり)

JAMMINがデザインしたアイテムには、ラジオから流れる胸が騒ぎ出すような音に、こもっていた卵の殻を打ち破って羽ばたき歌い出す小鳥たちが描かれています。「音楽」は魅力ある大人たちの話を、「小鳥」は若者を表し、「だっぴ」の活動を表現しました。

チャリティーアイテムの販売期間は、1月8日〜1月14日までの1週間。JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、「だっぴ」の活動について、写真と共により詳しいインタビューを掲載中!ぜひチェックしてみてくださいね。

地域の大人との出会い、若者の「生き方」を考えるヒントに〜NPO法人だっぴ

山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。

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