オルタナS編集部はこのたび、社会の広告社と共同で大学生向けにソーシャルイシューの現場を体感する「ソーシャルステイ」を行いました。今回のステイ先は、介護や保育や障がい者支援を展開している社会福祉の現場。公募で集まった大学生たちは、社会福祉の領域で活躍する若手リーダーのもとを訪れ、密着取材を実施しました。その模様をお伝えします。
「社会福祉HERO’S TOKYO 2019」プレゼンテーターに学生ライターが会いに行った! 連載⑥柚の木福祉会 藤田智絵さん『小学校内に障がい者作業所、「できる」と笑顔が交わる魔法の部屋』
社会福祉の現場でさまざまな挑戦をしている若手スタッフたちが登壇するイベント「社会福祉HERO’S TOKYO 2019」(12/10開催)に登壇する7人のプレゼンテーターに学生ライターが密着取材。その第六弾は、国際基督教大学の西坂玲香さんが、社会福祉法人柚の木福祉会(福岡県)で働く藤田智絵さんに会ってきました。
皆さんは子どもの頃、休み時間に障がいのある方がたと遊んだり、何かを教わったりしたことはありますか?
障がいのある子どもたちが同世代の子どもたちと触れ合う機会が少ないまま育ち、大人になっていきます。これらの問題をとある小学校の余裕教室を活用して解決することで、2015年度グッドデザイン賞も受賞した、魔法のような「部屋」を実現させたヒーローに話を聞きました。(西坂玲香)
福岡県を拠点とする社会福祉法人柚の木福祉会。子ども・高齢者・障がいのある方が、「自立」「成長」「いきがい」を、すべててのライフステージで実現できるようにさまざまな事業を展開しています。そのなかの一つ、障がい者福祉の事業として、小学校内で知的障がいのある方が働く作業所「福祉創造塾ふれあいの部屋」を運営しています。
「みんなちがって、みんないい。そんな社会が広がって欲しい。そして“優しさ”が積み重なってほしい。子どもの頃に覚えた優しい心を持ち続けられる人が増えたら素敵じゃない?」——そう話すのは、柚の木福祉会 営業次長の藤田智絵さん(31)。
福岡県、志免南小学校内にある障がい者作業所「ふれあいの部屋」。仕切りのない廊下でつながった、1年生の隣の教室をそのまま使用しています。休み時間には大勢の子どもたちがこの部屋に訪れ、6人の障がいのあるご利用者とともに遊び、遠足や運動会などの行事にも参加します。このユニークな部屋をひと目見ようと、日本だけでなく、海外からも人が訪れます。その数は年間1300人を超えます。
「『ふれあいの部屋』を求めてこの学区に引っ越してきました。障がいのある方とあまり接する機会がなかった親が、子どもに彼らについて教えるのは難しいと思います。障がいのある方と自然と接することができるこの教室にある温かさを、子どもに“肌で”感じて欲しいと思い、引っ越してきました」と話すのは、広報の入江さんです。
障がいのある方が「できる」を感じることのできる場
「当時、高校を卒業した障がいのある方の多くはその後の行き場がなく、ほとんどの方が働いてないという現実があった。どこの作業所も定員がいっぱいで、社会に出られなかった」と話すのは「ふれあいの部屋」を開所した柚の木福祉会理事長の白谷憲生さん。
白谷さんは日本で初めて、小学校の余裕教室に障がい者作業所を設けた発起人。障がいのある利用者が“できる”ということを感じることができる場となりました。
「一つの仕事を利用者さんに合わせて割り振り、仕事をしてもらう。彼らができることを増やしていくことでそれが自信につながる。みんなできることが違っていて、一人ひとりに自分の100%がある。人にはそれぞれのあり方があって、それで完璧なんです。それを忘れちゃいけない」(白谷さん)
しかし、この障がい者作業所を小学校内につくる試みに対して、保護者からの反対意見は少なくありませんでした。この”障がい”に対する人びとの心のバリアを取り除くべく、「ふれあいの部屋」の塾長に就任した藤田さんは「明るい福祉の発信」を探求していきます。