国際NGOプラン・インターナショナル・ジャパンの馬野裕朗さんは世界の子どもたちへの支援と、地域の自立支援活動を行なっている。今回の支援の舞台は未だにカーストの差別が色濃く残るインド。低カーストの中でもさらに「女の子だから」という理由で、教育を受けることができない子どもたちが大勢いる。その子たちに対して、どのような支援を行っているのか話を聞いた。(聞き手・Readyfor支局=榎本 未希・オルタナS支局スタッフ)

※馬野さんたちは、クラウドファンディングサービス・Readyforによる国際協力活動応援プログラム「Readyfor VOYAGE」で32日間のクラウドファンディングに挑戦中です!インドの低カーストの女の子たちに奨学金と教育支援を届けるため、200万円の寄付の呼びかけを行なっています。寄付の受け付けは2017年4月28日金曜日23時まで!<詳しくはこちらから>

<前回の記事はこちらから>

活動への熱い想いを話してくださった馬野さん。プログラム部マネジャーとして世界の多くの地域の方々のために活動しています

―――――世界中の「子どもたち」に対して支援を行なう中で、今回プラン・インターナショナルがインドの女の子に対して支援活動を行うのはなぜでしょうか?

馬野:世界中には様々な差別により貧困に苦しんでいる人たちが大勢います。その原因の大多数を占めるのが、女の子や女性に対する差別です。

女性は日常生活の中でさまざまな差別を受けています。例えば食事の順番や家事の分担。電化製品がない途上国では、家事は一日中かかる重労働です。それを多くの国で女性や女の子が担っています。

女の子は教育や結婚という人生の大事なタイミングでも差別を受けています。「学校に行きたい」と思っても、女の子は親に「行かなくていい」と言われたら、学校に行きたいと思っていてもあきらめなければなりません。

「結婚しないで勉強したい」と思っているのに、親から「(決められた人と)結婚しなさい」と言われたら、女の子は「結婚しなくちゃいけない」と思ってしまいます。「結婚したくないと言っちゃいけない」と思ってしまう。小さくても何かアクションがなければ、このような状況が未来永劫続いてしまいます。これが貧困の負のサイクルを引き起こしています。

「女の子だから」それだけで学校にいけない女の子が今でもたくさんいます

女の子は、男の子が学校に行くのを横目で見て「自分も学校に行きたい」と思いながら掃除や洗濯をしています。女の子と男の子ではスタート地点が既に違っているのです。女の子と男の子への支援を同じように進めても、その差はなかなか埋まりません。そのギャップを埋めるのが私たちプラン・インターナショナルの仕事です。

このためには男の子を含めた「地域全体」で考え方を変えていかなければなりません。私たちの目標としている姿は、男の子、男性と同様に女の子、女性も尊敬される。

敬意をもって接せられる。そして女の子も男の子と同様に自分のやりたいことを「やりたい」と言うことができる。さらに女の子が「これをやりたい」と言ったときに、それを周りが支えてあげる。

周りが否定せずに男の子に対するのと同様に「頑張れ」と言ってあげられる環境を作ること、です。女の子への自立支援ももちろん大事ですが、女の子の周りにいる地域の人も巻き込むことが大切です。

学校に行けなくなるということは、外の世界を知ることができなくなってしまうということです。多くの国では、女の子が家事のすべてを行うことが当たり前になっています。この状況が、世代を超えてずっと続いてきたので、何の疑問にも思われません。

しかし女の子が学校に行くことは、女の子自身が「この状況はちょっとおかしいのではないか」という事を学び、気づくチャンスになるのです。

現地の多くの人も、男女間に差別があるということを頭の中では分かっています。でも、それを変えようという行動が実践できているかということは別の問題です。

人のプライドや恥に関わる慣習は一気には変えられないのです。だから僕たちは長期的な視野を持って、現地の人と一緒になって考えています。僕たちの現在の活動が、50年後に変わるためのきっかけになったら良いなと思います。

男の子だから、女の子から、という理由がそのまま差別につながってしまう状況に対して、長期的なアプローチが必要だと語る馬野さん

―――――今回のクラウドファンデングではインドの低カーストの女の子に奨学金を届けるとのことでしたが、その支援はその地域へどんな影響をもたらしていくのですか。

馬野:支給対象者の数は限られますが、彼女たちの存在そのものが世代を超え、また同世代の仲間にも波及する効果が期待されます。

たとえば同じアジアのパキスタンにおける女子教育のプロジェクトで、モスクの女子コーラン学校に公教育を導入する活動を行いました。対象の女の子たちに算数と公用語(ウルドゥー語)と英語を教えていたのですが、そこで教え始めたら「他のモスクでもやってほしい!」と宗教指導者たちが言い出しました。

女の子たちが読み書きができるようになったことにより、読み書きのできない親たちが、領収書や説明書の文字の内容などを子どもに代わりに読んでもらうなどして実際的な利益を感じたことも、こうした変化の一つの要因になったと思います。

これが宗教指導者にも伝わって、この活動を広げていけるようにと、プラン・インターナショナルや地方の議会や教育省の出先機関にも交渉するようになりました。

学校に行けるか否かは、その人の一生にとても大きな影響を与えます。女の子が学校に行けないことによって、外の社会を知らず、家の中で常に家事をする生活を送るだけでは、尊厳のある、人間らしい生活ができないまま一生を過ごしてしまうかもしれません。

今回のクラウドファンディングの支援の対象者として選ばれなかった女の子たちも、奨学金は得ることができないかもしれませんが、支援の対象者を通して外部の世界を知ることができます。

あるいは奨学金によって教育を受けるチャンスを得た女の子から生まれる次の世代の子どもたちが、健康で尊厳を持った生き方ができるかもしれません。このプロジェクトを通して、女の子の立場を引き上げ、世代を超えてチャンスを拡げていきたいと考えています。この活動はそのために必要な第一歩となります。

やらなければ変わらなかったかもしれませんが、小さいところからでも始めれば、その効果を知った人たちから別の人たちへ広がっていきます。

ずっとゼロだと変わりませんが、ちょっとしたきっかけがあると、その当事者だけでなく、その周りの人も変化に気が付くようになります。まずはその変化のきっかけを作ってあげることが重要だと、いろんなプロジェクトを通して感じています。

女の子たちは自分の未来を切り拓くために、一生懸命勉強します

―――――ありがとうございます。今回のクラウドファンディングの成功を通じてインドの教育に対して一石を投じていけるような、そんなプロジェクトになることを祈っています。最後に、今回のクラウドファンディングの意気込みをお聞かせください。

馬野:インドで暮らす女の子たちが「貧困のスパイラル」から抜け出すために、安心して教育を受けられるようにしてあげることは大変重要であり、急務でもあります。

そこから多くの子どもたちが、自分で自分の未来を切り開いていけるよう、これからも活動を続けていきます。そのためにも今回のクラウドファンディングはなんとしても成功しなければなりません。どうか皆様、私たちの活動をご覧いただき、ご支援いただけますと幸いです。

これからも、途上国の人たちとの「対話」を重ねながら必要な支援をしていくと意気込みを話してくれた馬野さん

馬野さんたち、プラン・インターナショナル・ジャパンが挑戦しているクラウドファンディングは、2017年4月28日(金)23時まで!詳細はこちら

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