映像プロダクションのEXIT FILM(イグジットフィルム)は1月17日、「いじめ」をテーマにした6分間のショートフィルムを公開した。中学校でいじめを受ける男子生徒がダンスを通して尊厳を見出していく様子を描いた。同社は2015年から毎年一つ社会問題を選び映像作品を制作している。(オルタナS編集長=池田 真隆)
公開したのは、「Bullying and Behavior」。同作品は、国内外のアワードの受賞歴があるウェブプロダクションGarden Eightと組んで制作した。
メインキャストにはタップダンサーSouma (17)とTEAM G-SHOCK専属のブレイクダンサーShigekix(15)を起用した。Soumaは14歳でタップ団体を創設し、Shigekixはユースオリンピックアジア予選で優勝した実績を持つ。
本作の監督を務めたEXIT FILM代表の田村祥宏氏は、「いじめの渦中にある子どもに、ぎりぎりでもいいから自分の尊厳を保てる何かを見つけて、今置かれている閉ざされた世界の外に希望をもってほしい」と述べている。
同社は「社会変容の起点となる価値観を提示するストーリーの輩出」を掲げている。社会問題を啓発する作品づくりを始めたのは2015年から。熊本県阿蘇郡南小国町の黒川温泉を舞台に制作した「KUROKAWA WONDERLAND」が始まり。
当初から社会的な目的があったわけではないという。クリエイターとして国際的に評価される作品の創作機会を探していたときに、たまたま地域課題に出合った。
黒川の住民と関係を構築するなかで、人口減少や伝統芸能の消滅など地域の課題を知るようになる。クリエイティブの力を活用して、消滅してしまいそうな文化を、「広がりのある文化に再構築する」という意識を持つようになる。
そうした意識を持つことで、クリエイターとして主体的に課題に取り組むようになった。2017年には教育課題の解決とクリエイターの社会参画を目的に、「横瀬クリエイティビティー・クラス」というクリエイティブ教育プログラムを埼玉県秩父横瀬町と連携して、半年間行った。
今作では、誰にも理解されない状況でダンスを通じて自身の尊厳を維持する主人公の姿を描くことで、いじめを受けたり、生きづらさを抱えたりしている子どもたちの拠り所となる価値観や世界観の提示を試みている。