東日本大震災から7年が経過し、伊藤忠商事と岩手県陸前高田市との絆も7年になる。同社及び伊藤忠グループ会社の社員、延べ400人がボランティアで訪れ、現在まで交流を続けてきた。伊藤忠グループの本業を通じた復興支援として、同市のブランド米「たかたのゆめ」の販売・PRも手掛ける。継続して復興支援を続ける成果を追った。(オルタナS編集長=池田 真隆)

■社員ボランティアの想いを絶やさない

伊藤忠商事と陸前高田市の交流は、2011年にさかのぼる。有志社員たちが津波で甚大な被害を受けた同市の災害ボランティアとして、ほぼ毎月訪れていたことがきっかけ。2013年からは「伊藤忠子どもの夢ファンド」を通じて、同市内の学校の部活動や少年野球大会などの支援を行ってきた。

伊藤忠グループが販売を支援する陸前高田市のブランド米「たかたのゆめ」とは、「いわた13号」という新品種米だ。伊藤忠商事は、ボランティアでできたこの縁をもとに、息の長い支援に発展させるために伊藤忠食糧のネットワークを活用。2013年から本業を通じた復興支援として生産過程から販売まで関わることを決め、同市との関係をより深めていった。

同社は、震災後に作付けが始まったこの「たかたのゆめ」を毎年さまざまな機会でPR。今年も3月9日から11日まで、3日連続で異なる復興支援イベントを開き、「たかたのゆめ」の魅力を伝えた。

■未来に向けた一歩を!これからの日本を担う子ども向けに「体験型PR」

3月11日、東京・池袋サンシャインシティで子ども向けのフリーマーケット「MOTTAINAI キッズタウン TOKYO」が開かれた。同社の情報・金融カンパニーと毎日新聞社が推進する「MOTTAINAIキャンペ―ン事務局」が主催し、当日は約1万5000人の親子が訪れ、多いに盛り上がった。

3月11日という忘れられない日に、同イベントのテーマでもある「新しい体験」として「たかたのゆめ」理科教室と題し、陸前高田市の職員などの協力のもと、稲穂からお米になるまでの精米体験と試食をしてもらった。

陸前高田市職員などが総出で親子にPR

小池百合子東京都知事も試食

同社がオフィシャルスポンサーを務める職業・社会体験施設「キッザニア東京」が3月10日に開催した中学生向けプログラム「第5回ジュニア チャレンジ ジャパン」では、次世代を担う中学生向けに「たかたのゆめ」をアピールした。

「ソーシャル」のテーマで、中学生に復興支援について考えてもらうプログラムを提供した。ボランティアで参加した社員自らが、世界各国で仕事をする総合商社の社会的責任として、東北復興支援を行っていることを説明し、たかたのゆめプロジェクトを動画で紹介。

その後、中学生たちに「たかたのゆめ」のおにぎりを実際に食べてもらい、PRポイントや陸前高田への激励メッセージをカードに書いてもらった。参加した中学生たちは「たかたのゆめ」の誕生ストーリーや特徴に興味を持ち、自分の言葉で心をこめて書いていた。82名のカードは、「たかたのゆめ」の生産農家に送り、関係者100名規模が集まる「たかたのゆめ」田植え式にも掲出し、現地に届ける。

「冷めてもおいしい!」と、大勢の中学生が「たかたのゆめ」のファンに

■「たかたのゆめ」を通して「陸前高田の夢」を全国に

同社では、社員にも復興支援への意識を醸成するため、「陸前高田市物産展」を東京本社で3月9日に開催した。陸前高田市役所職員や同市で活動するNPO法人Aid TAKATA、同社のサステナビリティ推進室の社員らが立ち、たかたのゆめ、わかめ、おつまみ板昆布、しいたけ、恋するとまとなどを販売した。社内でも認知度の高い「たかたのゆめ」をはじめ、多くの商品が完売していた。

陸前高田市のゆめ大使「たかたのゆめちゃん」も登場

陸前高田市農林水産部の熊谷剛さんは、「震災後、津波で農地がすさんで農家の皆さんが本当に困っていたが、伊藤忠さんに助けてもらいながら、『たかたのゆめ』を皆さんに食べてもらえるようになった。これから農家さんと力を合わせながら、日本全国に『たかたのゆめ』というお米を届けて、農家の皆さんの夢を全国に届けたい」と話した。

同市は、安定供給と販促を強化していくために「栽培戦略部会」「販売戦略部会」を発足。年に4回ほど、生産農家、JA、そして、販売を担当する伊藤忠食糧などが集まり、ブランド化へ向けて話し合っている。伊藤忠グループは、田植えや稲刈りに毎年多くの社員を派遣し、その人数は2018年3月時点で90人を超えた。

わずか約6kgの種もみだった「たかたのゆめ」。2013年は、1農家あたり15アールの作付面積からのスタートだった。今は50世帯を超える農家が作付けし、50ヘクタールを超えるまでに作付面積を広げている。大きなブームではないけれど、しっかりと着実に、「たかたのゆめ」のファンは増えている。


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