「早く入りたいー!」。開場前の体育館の入り口に、待ちきれない子どもたちが集まってきた。開場と同時に、わくわくする気持ちを抱えて一斉に入ってくる子どもたち。ここは、京都府南丹市にある京都府立丹波支援学校。業務用音響機器・映像機器メーカーのTOA(兵庫県神戸市)が企業メセナ活動の一環として実施している「TOA Music Workshop(以下、TMW)」の2017年度開催校のひとつだ。(オルタナS関西支局特派員=立藤 慶子)

打楽器の演奏とアフリカの動物に扮したダンサーの踊りに魅了される子どもたち

TMWは、「音楽を通して、仲間とともに参加する喜び、新たな自分の発見を楽しんでほしい」との思いを込めて、2005年に始めた出張型のワークショップだ。TMWのために特別編成したアーティストとダンサーチームが学校に出向き、子どもたちの表現活動を誘う。現在はTOA、NPO法人子どもとアーティストの出会い(京都府京都市)、株式会社ジーベック(兵庫県神戸市)とのパートナーシップで実施しており、京都府丹波支援学校での本公演で記念すべき100回目、累計参加児童数は1万900名を達成した。

進行役の浜崎聡さんが「目でよく見て、耳でよく聴き、頭でよく考えること」と説明すると、子どもたちは大きな声で「目、耳、頭!」と繰り返す。高鳴る胸を抑えきれない様子。ミュージシャンがアフリカの朝を音楽で表現し始めると、ダンサーの動きに合わせて一斉に踊り始める。ゾウ、とり、ゴリラ、ワニ…。全身を使い、元気な笑い声がこだまする。次にアーティストたちによるアフリカをイメージしたパフォーマンス。力強い打楽器に呼応するように、子どもたちは手拍子を打ち、体を動かし、会場は一体感に包まれる。

子どもたちをナビゲートするアーティスト

フィナーレを迎え浜崎さんが感想を求めると、子どもたちから次々と手が挙がった。マイクを握りしめ「楽しかったです!」「ジャンベがかっこよかった!」と、興奮して話す子どもたち。

本事業の受け入れ担当の先生はこう話す。「普段の子どもたちは、何かをさせようとしても取り組むまでに時間がかかる。しかし今回は、個々の表現の仕方に差はあっても、皆あっという間にリズムを刻み、生き生きと楽しんでくれた」。

「障害があると、本物の芸術や音楽に触れる機会が少ない」と話すのは、中等部の先生。「自閉症で集団適応が難しい子どもや車いすの子どもも、スピーカーから出る音の響きに共鳴してつられて体を動かし、教室に戻った後に『たくさん踊ったなあ』と感想の声を漏らす子もいました」。

TMWは12年間の実績あるプログラムだが、支援学校での公演は今回が初めてだったという。総合プロデュースを務めるTOA広報室の担当者は話す。「障害を持つ方もそうでない方も、芸術・音楽は同じように楽しむことができると、改めて感じました。TMWでそのような時間を創り出せたことは、今後の糧になると思います」。100回目にして新しいフィールドを開いたTMW。子どもたちの感受性・創造性・表現力を育てるこの活動が、これからも多くの子どもたちに届けられることを期待したい。

TOAミュージックワークショップ:http://www.toa.co.jp/mecenat/tmw/


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