障がい者の就労支援などのソーシャルビジネスを展開するゼネラルパートナーズの調査・研究機関「障がい者総合研究所」は、このほど、発達障がいがある当事者約100人へ障がいのカミングアウトに関するアンケートを実施した。その結果、発達障がいであることを周囲に伝えても、相手との関係性は「伝える前と変わらない」という回答が6割近くとなった。関係性が「良くなった」という回答と合わせると、9割近くにのぼっており、発達障がいについてスムーズに受け入れられている様子がうかがえる。一方で、知人など関係性の遠い相手に対しては、発達障がいであることを伝えられていない場合も多い。当事者の声から見えてきたのは、「本質的な理解」という課題だった。(オルタナS編集長=池田 真隆)

もし発達障がいがあるとカミングアウトされたら?

2005年に施行された発達障害者支援法が約10年ぶりに改正されるなど、発達障がいに対する認知は大きく進んでいる。こうした中、「発達障がい」という言葉も頻繁に目にするようになり、徐々に私たちの身近なものになりつつある。そこで、障がい者総合研究所では、発達障がいのある当事者92人に対して、自身の障がいを周囲にカミングアウトしているかを聞いた。

その結果、自身に発達障がいがあることをカミングアウトしている相手としては、親(92%)、恋人(90%)、親友(68%)、知人(45%)の順番で多くなっており、関係性が遠い相手ほど、伝えられていないことが分かる。なお、障がいを伝えられていない理由としては、「伝えても理解してくれないと思う」が最も多かった。

なお、今回の調査で着目したいのは、カミングアウト後の相手との関係性だ。親・恋人・親友・知人のいずれについても、伝えた後で「関係が悪くなった」と回答した人はわずか1割。「良くなった」「伝える前と変わらない」という回答が大半を占めた。

今回の調査結果のまとめ

また同調査では、カミングアウトをした後での、相手の障がいへの理解度についても聞いている。こちらでも、親・恋人・親友・知人のいずれも、6割以上が「障がいを理解してくれていると感じる」と答えた。

具体的には、「『キミの変なところが、やっと理由があることが分かって逆に安心した』と言われた」(30代/男性)、「障がいの特性を把握しようとし、その状態を改善する手助けをしてくれている」(20代/女性)などの声が挙がっている。

一方で、「障がいを理解してくれていないと感じる」という人も3~4割いる。こうした人たちからは、「障がいをめんどくさいものと捉えられ、疎遠になってしまった」(20代/女性)、「ほとんどの人に『へぇ大変だね』と言われ、『どこが障がい?』と聞かれる。世間の情報をもとに漠然とした大変さは感じてくれているが、見た目では分からないので、理解はあまり無い」(30代/男性)といった声が聞かれた。

カミングアウトをした結果、「障がいを理解してくれていると感じる」という回答がいずれも6割以上にのぼり、特に「恋人」「親友」では68%と最も高い

今回の調査に関して、障がい者総合研究所の中山伸大所長は、こう指摘する。「発達障がいがあることをカミングアウトしても、相手が『障がいを理解してくれていないと感じる』人が3~4割いる。このことから、伝えることが必ずしも理解につながっていないことが分かった。理解してくれていないと感じる理由としては、「できない要因を努力不足とされる」「ありのままを受け入れてもらえない」など。発達障がいの認知は広がってきたが、本質的な理解という点では、まだまだ課題が残されていると言える」。

■ゼネラルパートナーズ社が行った発達障がい者のカミングアウトに関する調査(親・恋人編)の結果はこちら


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