「パレスチナ」と聞くと、皆さんはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。紛争、爆撃、人々の泣き顔…。ネガティブなイメージを浮かべる方が多いのではないかと思います。「歴史や宗教が絡んでいて、どんな問題なのかはよくわからない」と感じている方が多いのも事実ではないでしょうか。実際にどんなことが起きているのか──。パレスチナ自治区のひとつ「ガザ地区」の現状について、現地で活動するNPOに話を聞きました。(JAMMIN=山本 めぐみ)

■厳しい封鎖が続くガザ地区

ガザ地区で、破壊された街の中、幼稚園に通う少女

NPO法人パレスチナ子どものキャンペーン(以下「CCP Japan、東京)は、パレスチナ問題により困難な状況に置かれている子どもとその家族・コミュニティーに対し、教育・保健・福祉・心理・経済面で人道的な支援を行い、彼らの人権を擁護し、自立的な生活向上のために活動しています。

CCP Japanのスタッフとして、パレスチナ自治区の一つである「ガザ地区」に3年に及び滞在し、支援にあたった中村哲也(なかむら・てつや)さん(36)によると、ガザ地区はその現状から「天井のない監獄」と呼ばれていると言います。

CCP Japanの中村哲也さん。2004年からパレスチナ支援に携わり、2011年からは駐在員としてガザ地区に3年に渡り滞在した

「ガザ地区は幅10km、長さ40km程度の小さな土地に人口190万人もが暮らす地域。四方を他国や海に囲まれているが、イスラエルによって封鎖され、人や物の出入りが極端に制限されている状況がずっと続いている。人道支援団体は辛うじて出入りを許可されているが、それでも厳しい検問を越えていく必要がある。現地の一般の人が外へ自由に出入りすることは、さらに不可能な状態」と現地の状況を語ります。

■外界との流通の一切の遮断が、失業率や自殺率の増加に加担

ガザ地区の様子。琵琶湖の半分ほどの大きさの土地に、190万人が暮らす

外界との流通の一切が遮断されることはすなわち、この地区だけで賄うことのできない水や食料、エネルギーなど、生活に必要な物資の不足に陥ることを意味します。

「食料難やガソリンや重油などの燃料不足、停電、それに伴って上下水道のインフラが止まったりと、生活の上に様々な影が落とされている。電気は一日のうち4時間ほどしか使えず、医療機関でも停電がある。経済は停滞し、人口の8割の人が支援に頼らざるを得ない状況にある」

笑顔を見せる子どもたち。過酷な状況であっても、ここが彼らの生まれ育つ場所であることに変わりはない。健康に育ち、希望ある未来を描けるように活動を続けている

度重なるイスラエル軍の空爆により、工場や農地など働き口となる場所が破壊されています。さらに封鎖によって、これらを修復するための建築資材も手に入りにくい状況で、再建への目処が立たない状況の所も多いと中村さんは話します。

封鎖により、地区への物資の輸入だけでなく輸出もすべて制限されるため、産業が停滞し、ガザ地区の若者の失業率は60%を超えているといいます。

「大学を出ても就職できず、ガザの中では将来に希望を見いだせないと感じている若者が多く、近年では、若者の自殺も増加している。ガザの人たちが人間らしい生活を取り戻すための復興への道筋が破壊されて見通しが立たないという現状がある」

■封鎖は、子どもの栄養失調の要因にも

ガザ地区で、農業支援に携わる中村さん(右)。現地の人たちと

2011年にガザ地区へ赴任した中村さん。緊迫した状況の中でも、人との距離の近さを感じ、心癒されることも多くあったといいます。

「パレスチナの人たちは人懐こくて、人同士の距離が近い。ガザ地区で農業支援に携わっていたが、農家さんのところに行くと『よく来たね』と帰り際にたくさんの野菜を持たせてくれた。日本人に対しても良い印象を持っていて、歓迎されていると感じることが多かった」と当時を振り返ります。

ガザ地区では日本と同様、きゅうりやトマト、オクラやにんじんなどの野菜が採れるそうです。しかし封鎖によるエネルギー不足や資材不足から野菜の価格は高騰するうえ冷蔵保存もできず、仕事がなく貧しい現地の人たちにとっては手を出しづらい。こういった要因から多くの乳幼児が栄養失調状態に陥っているといいます。

小児科医による診察の様子

CCP Japanでは、ガザ地区への支援の一つとして乳幼児への栄養支援を行っています。医師が子どもたちを診療し、一人ひとりの栄養状態に合わせてビタミン剤や鉄剤を処方することで1日でもはやい栄養状態の回復を支援するほか、低栄養状態にある子どもを抱える親に向けてワークショップを開催し、「限られた資源の中でどういった食材を選び、どうやって子どもたちに適切な栄養を届けられるか」といった情報を伝えたり、彼らの相談に乗ることにも力を入れています。

■「人の中に残る支援」を目指して

爆撃で足を失った少年。CCP Japanが義足の提供とリハビリ、心理サポートを行った。現在は歩いて学校へ通い、「将来の夢はゴールキーパー」と語るほど、元気と笑顔を取り戻している

2004年からパレスチナ支援の活動に携わっている中村さん。印象に残っている出来事を聞くと次のような答えが返ってきました。

「支援しているガザ地区の児童館に通っていた子どもの一人が、今では成長し、大学でジャーナリズムを専攻している。昨年12月にガザを訪れた際、この子が『この先自分の夢がかなうかどうかはわからないけれど、児童館で得た経験が自信になって、自分のことを誇りに思える』と話してくれた。パレスチナに関するニュースは、暗いことばかり。爆撃によって多くの人の命が奪われ、積み上げてきたものが破壊されるだけでなく、長く続いている封鎖は人々の生活や心をも破壊する。一見希望を育てるのは難しいような状況だが、それでも活動を続けていると人の中には何かが残り、何か役に立つことができて、変わらず成長していくものがあるんだと実感した瞬間だった。教育や成長が保証され、次世代をつくっていく人材として力をつけ、やがてはパレスチナの自立の力となっていくような支援をこれからも続けていけたら」

ガザ地区の子どもたちがたくさんの経験を通じて自信を持って成長できるようにと、2006年に設立した「ナワール児童館」の子どもたち

■ガザ地区の子どもたちをサポートできるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)はCCP Japanと1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。

1アイテム購入につき700円がCCP Japanへとチャリティーされ、ガザ地区の栄養失調状態にある子どもたちへ薬剤を提供するための資金となります。

子どもたちの栄養状態に応じて処方する薬剤は異なりますが、1人あたり1ヶ月およそ500円の薬剤代が必要です。今回のキャンペーンで、300人の子どもに1ヶ月分の薬剤を提供するための費用・15万円を集めることが目標です。

「JAMMIN×CCP Japan」1週間限定のチャリティーデザイン(ベーシックTシャツのカラーは全8色。他にパーカーやマルシェバッグ、キッズ用Tシャツなどもあり)

JAMMINがデザインしたTシャツに描かれているのは、平和を象徴する「オリーブの木」を運ぶラクダの姿。その周りに、同じく平和の象徴である「鳩を描きました。パレスチナに生息するラクダと平和の象徴を描き、困難の中にある子どもたちが人間らしく生きられる世界の実現と、平和な未来への願いを込めています。

チャリティーアイテムの販売期間は、3月26日~4月1日までの1週間。JAMMINホームページから購入できます。

特集ページでは、パレスチナの現状について、より詳しいインタビューを掲載中!こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

「天井のない監獄」を生きる子どもたちに、人間らしく生きる環境と、平和な未来を〜NPO法人パレスチナ子どものキャンペーン

山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。

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