海外で難民支援などを行う特定非営利活動法人JEN(木山啓子代表理事)が助成金を不正に使用していたことが27日、明らかになった。同法人では、出納簿に記録されていない現金の存在も確認されており、同団体のガバナンスが大きく問われそうだ。(オルタナS編集長=池田 真隆)

特定非営利活動法人JEN

JENの調査報告書によると、不正の内容は次の通り。

・助成金の一部につき、目的範囲外の使用があったこと
JEN は、ヨルダンのシリア難民に対する水衛生環境・学習改善事業に関し、特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)より助成金の支給を受けていたところ、ヨルダン事務所の事務所長の独断により、映画館に相当する建築物(建設費用約920万円相当)がヨルダンのシリア難民キャンプ区内に建設されていることが判明した。

かかる建築物の建設目的はシリア難民へのレクリエーションおよびノンフォーマル教育機会の提供であるが、事前にJPFより承認された助成金の支給目的(水衛生施設の 整備・修復事業)の範囲外であった。

・簿外現金の取扱い
ヨルダン事務所内にある金庫内において、出納簿に記録されていない現金の存在が確認された。この簿外現金の資金源が助成金なのかヨルダン事務所の事務所長の自己資金なのか等は明らかではないが、この簿外現金は、少なくとも2013年以降、存在していたと認められる。簿外現金の金額は、実査の結果、2018年4月24日現在で約75万円程度であった。

・内部規則違反の調達取引
ヨルダン事務所では、職員は自らの近親者等を JEN の資材等調達手続に関わらせてはならないという規則等があるにもかかわらず、同事務所の調達担当者が、その近親者が株主かつ代表を務める会社とJENとの間で調達に関する契約を締結し、これを実行していたことが判明した。

なお、かかる調達の際の価格と市場価格の差額がJENの損害額ということになるが、当該調達が行われた当時の市場相場の価格を遡って確認することが困難であったため、かかる規則等違反による JENの損害額については算定することが出来なかった。

・ガバナンス上の問題点
根本的原因としては、ヨルダン事務所に対する管理・統制が内部モニタリングを含め、不十分であったこと、ヨルダン事務所・東京本部間でいわば情報の遮断が生じており、コミュニケーションが円滑に進んでいなかったこと等が挙げられる。

また、JEN は、いわゆる認定 NPO 法人として、通常のNPO法人に比べより公正公平に公益のために活動することが社会的に期待されており、またその活動は寄付金や助成金によって支えられていることから、寄付金や助成金を託された者としての責任意識を職員間で十分に共有した上で行うべきであった。

総じて、JEN では、難民・国内避難民及び被災者の支援という目的とその目的に対する使 命感が共有されている一方で、寄付金や助成金を託された者としての責任、すなわち、事業遂行の過程での行動規範、規則、内部統制を理解し、遵守するコンプライアンス意識が浸透していなかったと思われる。

・再発防止策の提言
このような状況を踏まえ、当委員会は、今後の不適切な事業執行行為の再発を防止する とともに、JEN が認定 NPO 法人にふさわしいガバナンス及び管理体制を持った組織として生まれ変わるため、以下の再発防止策を講じることを提言する。
(1) 職員間における寄付金や助成金を託された者としての責任意識の共有
(2) 現地事業責任者等のローテーション(任期制)及び兼務状況等の見直し
(3) 東京本部における理事の役割・責務の明確化及び集中管理体制の整備
(4) JEN による調査の継続と改善策の実行


【編集部おすすめの最新ニュースやイベント情報などをLINEでお届け!】
友だち追加