日本の社会問題となっている高齢化社会。日本総人口は、平成28年9月1日現在、1億2,699万人となり、65歳以上の高齢者人口は、約3,434万人と高齢化率は27.0%となっている。また、東京都の高齢人口は約300万人(前年比4.8万人増)と初めて300万人を超える結果となっており、この先も高齢化社会のスピードは加速の一途を辿るということが推察できる。また現在は、核家族化により独居老人や、高齢者が高齢者を介護するといった老老介護という諸問題も発生してきてしまっているが、そんな超高齢化社会の中、地元のネットワークを活用してシニアサポートを行う、企業の取り組みを今回はご紹介したい。(オルタナ編集部)
前述で紹介した諸問題を対処するために、東京都文京区を中心に活動するNPO法人「 街ing(マッチング)本郷」では、ほぼ一人住まいになってしまった高齢者宅の空き部屋の片付けを行ない、そこに近隣学生を住まわせるといった「ひとつ屋根の下プロジェクト」という活動を行っている。この代表理事を務めるのが、鮮魚店「魚よし」3代目店主の長谷川さんだ。
■ひとつ屋根の下プロジェクトとは
ひとつ屋根の下プロジェクトは、シニアと若者の共生を目指すプロジェクト。大学生・大学院生が、文京区のシニアの住む家の空き部屋を借りてともに生活をするといった内容だ。
学生とシニアは、週に何度か一緒に夕食をとるなど団らんの機会を持ち、異世代が共に暮らすことで、学生とシニアそれぞれが地域と結び付くきっかけとなり、「街ぐるみでの見守りや生きがいを生み出す」新しい共助の関係を目指しているという。シニア側のメリットとしては、孤立感の解消や生きがいづくり、夜間の不安の解消、健康寿命の増進などが挙げられる。
学生側のメリットとしては、寂しさや孤立感の解消、シニアのみなさんからの知恵や経験の移転、大学の近くで格安で住めることなどが挙げるが、こうした事例は、フランスを中心としたヨーロッパなどでは先進的に取り組まれているという。
■共生を行う上での問題点
こうした支援を行っている「街ing 本郷」だが、空き部屋を解放する上で、シニア宅の不要なモノを整理、または処分する必要があることに課題を感じていたという。身近にあるモノは長年築いてきたシニアの方の想い出そのもの。“身近に置いておく必要はないが、捨てたくない”物や想い出の品の“保管スペース問題”から、なかなか空き部屋の確保が進まないといった課題に苦労していたそうだ。
■共生に共感を得たキュラーズの支援のかたち
全国52店舗・約31,000室を展開する日本最大級トランクルームのキュラーズは、この「ひとつ屋根の下プロジェクト」に共感し、シニアを対象としたサポートを2016年9月16日より、街ing本郷と連携して開始している。「片付け」の課題解決のなかで生まれる二次課題“保管スペース問題”を解決するために、仕分けされたモノの中で、捨てずに保管しておきたいモノがあれば、キュラーズが提供する「想い出BOX」に梱包し、最寄りのキュラーズ対象店舗までもっていけば、荷物の無料保管をしてくれる。
■トランクルーム無償支援を働きかけた仕掛け人
キュラーズのマーケティング部広報池田大和さんによると、今回の支援を行う最大の理由は、街を盛り上げるための方法の1つとして「シニアと学生の共生」を目指す街ing本郷の想いに共感したことだと話すが、「人々が必要とするところに、信頼でき 高く評価される ストレージスペースを紹介する」といった、そもそものキュラーズの企業理念にも合致すると考えたことと、“保管スペース問題”はトランクルーム事業を展開しているキュラーズだからこそ支援できると感じ、この連携の働きかけを決めたという。
■連携は第一ステップ 次に目指す支援の形は
“キュラーズは、全国52店舗・約31,000室のトランクルームを提供している会社ですが、今後はもっと店舗展開している地元の方達のご意見をもとに、支援の輪を広げていきたいと考えます。まだまだ一企業では成し遂げられないことが多くありますが、様々な団体・企業と連携しあうことで貢献できると思います。その為にも、まずはこのNPO法人街ingさんとの連携を深め、更なる支援活動の気付きを得ていきたいです”
いま日本では多くの高齢者の方々が問題を抱えています。こういった諸問題を解決するには、国の対策を待つといった受け身でいるのではなく、個人・団体・企業それぞれが、まずは自分で何ができるのか考えていくことが大事なのかもしれません。
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