赤、黄、緑、水色、青、紫……7色のレインボーカラーを身のまとったダンサーによるファッションショーが6月1日、大阪・堂島リバーフォーラムで開催された。主催したのは、大阪に本社を構えるアパレルメーカーのFor it。この日創業10周年を迎えた同社は、商品に付けるタグで消費者に社会課題を発信する「シェアタグ」を発表。アパレル業界全体で、SDGs(持続可能な開発目標)の目標達成に向けて取り組んでいこうと呼びかけた。(オルタナS関西支局=北川 由依)

6月1日、大阪・堂島リバーフォーラムで開かれたファッションショー

ファッションを楽しむことが社会貢献に

アパレルメーカーのFor itは、2008年に創業。消費低迷と価格競争の激化で国内アパレル市場が縮小する中、10年で48億円、取引社数200社以上と急成長を届けてきた。

そんなFor itが10周年を機に新たに取り組むのが「シェアタグ」だ。「シェアタグ」とは異なるアパレルブランドが共有する商品タグのこと。

タグに記載された情報からウェブサイトにアクセスすると、SDGsに関する取り組みやメッセージを確認できる。タグを持続可能な社会づくりに向けたメッセージツールとして捉えることで、通常の販売活動に加え社会貢献にもなる新たな付加価値創造の仕組みだ。

現在、日本人のSDGs認知度は14.8%(電通ジャパンブランド調査2018)。世界20カ国・地域の平均認知度51.6%から比べると極めて低い数値だ。このような状況を受けFor itではシェアタグを通じて認知度向上と、開発目標の達成に向けて一人ひとりが行動する機会をつくろうと考えた。

タグから始まるコミュニケーション

当日は業界関係者、約350名が堂島リバーフォーラムに集まった

そもそもFor itがシェアタグに取り組むことになったきっかけは、2015年に代表の山野眞成さんに子どもが産まれたことに始まる。

「未来の社会や地球のことを考えるようになり、自社の成長だけではなく、社会をより良くできる企業にバージョンアップしたいと思うようになりました」と振り返る。山野さんが目指すのは、「子どもたちが大人になった時、今よりももっとファッションを楽しめる世界をつくること」だ。

「僕が若い頃、ファッションはもっと楽しくて華やかで、個性がありました。しかし現在、業界は縮小し、閉塞感が漂っています。ファッションを通じて人の心を前向きにしたい。その思いからシェアタグの取り組みを始めることにしました」と語る。

山野さん自身の「it」も「お金のため」から「子ども達の未来のため」にこの10年で変化した。写真中央が山野さん

社名のFor itに込められているのは、スタッフ一人ひとりがそれぞれの働く理由「it」を大切にしてほしいという想い。創業当初、「Fun」「Smile」「Money」「Earth」など会社として大切にしたい「it」を自社製品のタグに刻んでいたことから、シェアタグの仕組みを思いついたそうだ。

「現在、自社製品だけで400万枚のタグを発行しています。すべての人がSDGsを認知して、ライフスタイルを変化していけるようシェアタグを通じて日本中にメッセージを届けたいです」

SDGsを自分ごとに考える社会へ

シェアタグの導入は2019年SSから。レディース・メンズ・ミセス・キッズなどさまざまなアパレルの卸メーカー、小売など業界全体でパートナーシップを組み、2020年の東京オリンピックまでに1億枚の商品タグを発行することを目指す。

「タグをきっかっけにSDGsを知った人がアクセスできるWEBサイトのオープンや、クラウドファンディングサイトと連携しソーシャルグッドな取り組みを応援する仕組みを整えていきます」と山野さんは今後の展望を楽しそうに語る。

SDGsカラーの衣装に身を包み、個性溢れる彩りある未来を表現した

SDGsと聞くと「難しそう」と感じたり、課題や義務と捉えたりする人もいる。しかしFor itが提案するシェアタグを通して発信する「オシャレ」「楽しい」というプラスの感情からは、服を着る誰もが自分ごととしてSDGsを考え、ライフスタイルを変化させていける可能性を感じた。

一枚のタグから始まる社会とのコミュニケーションを、消費者の一人として体験する日が待ち遠しい。

株式会社For it


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