いま、もし友人や家族、パートナーで働き方に悩んでいる人がいたら、その人にお勧めしたい本がある。その本では、「勝算はなくていい」「すぐにできなくてもいい」など、人生においてやらなくてもいいリストが書かれている。筆者はニュージーランドの原生林で半自給自足の生活を送る四角(よすみ)大輔さん。一見すると浮世離れした人物のように見えるが、かつては絢香やCHEMISTRYなどをブレイクさせ、名プロデューサーとして名を馳せた実績を持つ。森で暮らす筆者の声に耳を傾けてみよう。(オルタナS編集長=池田 真隆)
この本のタイトルは、『人生やらなくていいリスト』(講談社+α文庫)。帯に掲載された一つのメッセージから筆者の思いが伺いしれる。そこには、「頑張らなくていいことに『命=時間』を費やしている君へ」と小さく書かれている。
昨今、人生100年時代を見越して、働き方について書かれた本が増えている。それらの本と、この本が一線を画すのは、想定読者にあるだろう。おそらく、この本で設定した想定読者は、膨大なタスクを効率よくこなしたいと考えていたり、人工知能に対応した働き方を求めていたりするビジネスパーソンではないはずだ。
届けたい読者は、先に紹介した一文に集約されている。つまり、「頑張らなくていいことに時間を費やしている人」だ。では、どのような人なのか。真面目な性格であるがゆえに、要領よく振る舞えなかったり、小さなことにこだわりが強すぎしてしまい、組織で孤立してしまったりする人だろう。皆さんの周囲にもいるだろうか。
筆者はCD販売・配信で合わせてミリオンヒットを10回達成した元プロデューサー。この実績だけを聞くと、才能溢れたビジネスパーソンと想像しやすいが、実は筆者の四角さんもその一人だったという。
30歳までは「ダメ社員」。営業成績は最低ランクで、いじめにも遭っていたと明かす。本では、筆者の生い立ちからプロデューサー時代、そして現在のニュージーランドでの生活を通して、気付いたミニマム仕事術を紹介している。イラストが豊富にあり、読みやすいデザインだ。
「長く歌い続けられる名曲は必ず誰か一人のために作られている」――これは四角さんがプロデューサー時代に悟った真理だという。そして、スランプに陥ったアーティストには、「たくさんの人たちに向けて作った曲は誰にも伝わらない」とし、「今こそ自分のためだけに歌ってほしい」とアドバイスするそうだ。
効率化を目指したテクニック論を求めている人にはあまりお勧めしない。が、古くからある常識に縛られ、人間関係に疲れを感じている人にこそ読んでほしい。騒音や雑音に囲まれたコンクリートジャングルの中で悩んでいる人に「森の声」はよく響く。
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