山形県鶴岡市で街づくり事業を行うヤマガタデザインは9月19日、客室がすべて木造でできた宿泊施設「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」をオープンした。同施設の設計は建築業界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」を受賞した坂茂(ばん・しげる)氏が手掛けた。同氏がホテルを建設するのは初めてのことだ。水田に優しく浮かぶように設計されており、周辺の自然環境と調和した景観を作り出している。源泉かけ流しの天然温泉やフィットネス施設などもある。(オルタナS編集長=池田 真隆)
SUIDEN TERRASSEの木造の客室数は日本最大規模の143室を誇る。最も狭い部屋でも22mあり、すべての部屋に大窓(縦1.8m、横3.8m)が取り付けられており、田園や中庭など開放的な景色を眺めることができる。
貸し会議室やグループルームなどもあるため、企業の研修施設としても活用することができる。
朝食では地産地消にこだわり、自社農園の朝取り野菜サラダを提供する。ブックディレクターの幅允孝氏が「オトナもコドモ コドモもオトナ」をテーマに選んだ約1000冊のライブラリーもある。
近隣には、全天候型の児童遊戯施設「KIDS DOME SORAI」がある。コンセプトは、「子どもの本能と創造性が爆発する遊び場」。山形県産のスギ、カラマツを使ったドーム型の木造屋根で、圧巻のスケールだ。
この施設の設計も、坂氏が手掛けた。施設内には、高さ6mのネット遊具や木製のバンクなどがあり、大人も子どもも童心にかえって遊べる空間になっている。
10月1日から31日までは無料体験を行い、11月1日からグランドオープンの予定。利用料金は子ども(3歳以上)1500円、大人500円。
■地方創生のモデル都市へ
SUIDEN TERRASSEとKIDS DOME SORAIを企画したヤマガタデザインは、大手不動産会社出身の山中大介氏が2014年に設立した。同社は、山形県鶴岡市にあるサイエンスパーク内にある。
同パークでは、慶応義塾大学先端声明科学研究所を核に、病気の早期発見や新素材開発などの社会性の高いバイオベンチャーが6社生まれている。
そのうちの1社であるヒューマン・メタボローム・テクノロジーズは上場を果たし、人工の蜘蛛の糸を製造しているSpiber(スパイバー)は社員180人以上を雇用している。
このエリアでは400人ほどが働いており、7割が庄内以外から転入してきた。地元の雇用の受け皿になっているだけでなく、外から人を呼んでいるため、地方創生のモデルとして知られている。
ヤマガタデザインは鶴岡北部のサイエンスパークの不動産開発運営会社として設立したが、庄内地方の企業からの出資を基に、事業領域を拡大。いまでは庄内エリア全体をデザインする街づくり事業を手掛ける。カフェレストラン、農業施設、集合住宅などをつくった。設立から4年だが、約75億円規模の事業を生み出した。