環境省では社会起業家によるリレートークを行っています。毎月、社会起業の最前線で活躍する起業家を一人ゲストに招き、創業した経緯や事業のつくり方など等身大の物語を話してもらいます。この特集「社会起業前夜」では、ゲストが話した内容から社会起業に大切なキーエッセンスを紹介します。(オルタナS編集長=池田 真隆)
第3回のゲストに登壇したのは、障がい者雇用を行う花屋を営むローランズの福寿満希さん。駒込と川崎、原宿に店舗を持ち、社員60人のうち45人に障がいや難病があります。原宿店は日本財団と共同で立ち上げたお店で、カフェも併設しています。
福寿さんは、「障がい者の方は、働くうえでの障害を取り除けば健常者。職場から障害をなくすことが大切」と強調しました。ローランズでは、障がいがあるスタッフに対して禁句にしている言葉があります。それは、「障がいがあるからできません」。
障がいがあるスタッフどうしでトラブルが起きても、基本的に当人どうしで話し合って解決してもらうようにしていると言います。「悩んでいたら、誰かが助けてくれると思う癖があった。だから、あえて立ち入らないようにしている。でも、手は離すが、目は離さない」。
本人には、自分で考えて行動を取ってもらいます。うまくいかなくても、「もう一度考えてもらう」。この繰り返しで、「経験を奪わないようにしている」と言います。
福寿さんは「どうしたらできるようになるのか、お互いが補い合うことで、温かい職場をつくっていきたい」と話します。
ローランズで働く障がいがあるスタッフの平均年齢は35歳。全体の8割が精神疾患や難病、発達障がいなどがあるスタッフです。面接では、障がいの有無に関係なく、その人個人の性格や仕事に対する考えを見ていると言います。
厚労省の調査では、障がい者の平均賃金は月に20日働いても1万5千円程度ですが、ローランズでは15~20万円を支給しています。「一人の人として、働く幸せを積み上げてもらいたい」と主張しました。
ローランズでは2016年から障がい者雇用を始めましたが、苦労したことも少なくないと明かします。「突然スタッフが出勤しなくなり、納品に間に合わせるために、ほかのスタッフ総出で対応に追われたりすることもある」とします。
しかし、そのような壁にぶつかっても、「お互いの苦手な分野をお互いの強みで補うことを諦めない。コミュニケーションさえ工夫すれば、しっかり伝わる」と語句を強めます。苦手な分野を補うことで、働く上での障害をなくし、「健常者と同じように向き合えるようになる」とのことです。
■「働く場奪わないで」
「どうか私をここに置いてください」――これはローランズで働く21歳の女性スタッフの口から出た言葉です。そのスタッフはミスをしてしまいました。誰に怒られたわけでもないのですが、彼女は居場所を失うことを恐れて、とっさにその言葉が出たといいます。
福寿さんは、「健常者には求人はたくさんあるが、障がい者向けの求人は少ない。働ける場所を失うことをそれほど恐れているのかと改めて知った」と話します。
講演中、福寿さんは、「障がい者雇用にこだわっているわけではない」と何度も口にしました。この言葉の背景には、「福祉や社会課題を売りにして商売をしたくない」という経営者としての考えがあります。
「まずは、サービスに価値を感じてほしい。そして、そのサービスを通じて、社会課題を知らせたい」と話しました。
次回は10月26日で、ゲストは環境ITベンチャーのピリカを立ち上げた小嶌不二夫さんです。
第4回 テーマ「ITの力を駆使し、ポイ捨てごみ問題解決への挑戦を続ける」
株式会社ピリカ/一般社団法人ピリカ代表
小嶌 不二夫 氏
1987年、富山県生まれ。大阪府立大学卒、京都大学大学院在学中に世界を放浪。道中に訪れた全ての都市で大きな問題となっていたポイ捨てごみ問題の解決を目指し、2011年11月、株式会社ピリカを創業。ピリカはアイヌ語で「美しい」を意味する。世界最大規模のごみ拾いSNS「ピリカ」や、人工知能を使ったポイ捨て分布調査サービス「タカノメ」、水中浮遊ごみ調査装置「アルバトロス」を通じて、ごみの自然界流出問題の根本的な解決に取り組む。2018年、一般財団法人日本そうじ協会主催「掃除大賞2018」において環境大臣賞を受賞。
開催概要
|日 時|10月26日(金)18:30~20:00
|場 所|地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)セミナースペース (東京都渋谷区神宮前5-53-70 国連大学ビル1F)
|主 催|環境省(大臣官房 民間活動支援室)
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